『Love And Monsters』に『Spontaneous』と、2020年にリリースされた(つまりそれ以前に撮影されていた)映画2本ですでにコロナ渦を予見していたかのような脚本を立て続けに書いていたブライアン・ダッフィールドは(単なる偶然とはいえ)マジで凄いと思う。『Spontaneous』で人間爆発病がパンデミックを起こしていく様相はまさにコロナ。そして『キング・ジャック』に 『荒野にて』に『Words On Bathroom Walls』に『Spontaneous』と、一筋縄ではいかない青春を体現し続けるチャーリー・プラマー。
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そういえばオードリーの若林が書いた『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』の底があまりにも浅くてビックリした。彼が抱え続けていた「生きづらさ」は新自由主義のせいであって、「血の通った関係と没頭」が大切ということに気付くって、「新自由主義」って言いたいだけちゃうんか、と。
新自由主義(レーガノミクス)で社会の格差が広がったことで、そのシワ寄せが弱者(子供)に行き、「生きづらさ」とかそんなレベルの話ではなくなって、「血の通った関係」だけではどうにもならなくて命が失われてるんやぞ!っていう映画が「サム・フリークス Vol.11」で上映する『子供たちをよろしく』だからね。新自由主義の問題ってそういうところだよ(「サム・フリークス Vol.10」で上映した2作と比較してみてください)。1984年の映画ですでにここまで語っているわけで。
『子供たちをよろしく』といえばトム・ウェイツの「Take Care Of All My Children」はもちろんだけど、ポール・マッカートニー&マイケル・ジャクソンの「Say Say Say」も忘れがたい(売血のシーンで流れる)。
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映画『ザ・スイッチ』(監督:クリストファー・ランドン)観賞。★★★。
『ハッピー・デス・デイ』を手掛けたクリストファー・ランドンの最新作。『ハッピー・デス・デイ』が『恋はデジャ・ブ』を下敷きにしていたのに対して、本作は『13日の金曜日』を下敷きにしており、その分だけ映画としての格が若干落ちる感じ。それを補完する為に『転校生』というか『ホット・チック』的な身体入れ替わり要素を加えたり、ヴィンス・ヴォーンのような知名度のある役者を起用して映画としての質やルックを担保しようとしているんだが、まあ付け焼き刃な印象はある(そもそも『ハッピー・デス・デイ』は主人公の造形からして特異で突き抜けていた)。クリストファー・ランドンがジャンル映画の枠組みに対して真正面から取り組む人だということがよく分かるのと、『ゾンビーワールドへようこそ』の頃のようなコメディ風味のスプラッター趣味が本格的に復活しているのが収穫か。ちなみに予告編にダイ・アントワードの「I Fink U Freaky」が使われているのは本作の原題が『Freaky』であることに引っ掛けているからだが、本編では一切使われておりません! そういや、『ハッピー・デス・デイ』でも予告で執拗に流れていた50セントの「In Da Club」は本編の中では一切使われていなかったな。
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2020年の好きな音楽ベスト20です。なんと上半期とトップ3が変わらなかった。とりあえず年末のMudolly Vol.4が無事に開催されて良かったという1年でした。ちなみに19位のナティ・ぺルーソはアルゼンチンのシンガーです。
02.haruru犬love dog天使/Lonely EP
03.Charli XCX/How I'm Feeling Now
07.The Naked And Famous/Recover
09.Pop Smoke/Shoot For The Stars, Aim For The Moon
10.Machine Gun Kelly/Tickets To My Downfall
11.Megan Thee Stallion/Good News
14.Moment Joon/Passport & Garcon
16.Beach Slang/The Deadbeat Bang Of Heartbreak City
17.X/Alphabetland
18.Neon Nonthana & Eco Skinny/Psycho Pop
20.Bloodwitch/I Am Not Okay With This
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2020年の好きな映画ベスト10です。『Suzi Q』はダントツ。今年日本公開されるらしいのでお楽しみに。ベストには入れていないけど、『スターガール』は映画としてはそこそこといった感じなものの、音楽シークエンス/ミュージカル・シーンがどれも魔法がかっていて最高なので一見の価値あり。ビッグ・スター「Thirteen」、ビーチ・ボーイズ「Be True To Your School」、カーズ「Just What I Needed」、ジョージ・ハリスン「Give Me Love」って選曲からしてヤバすぎでしょ。『ソウルフル・ワールド』を観るついでにディズニープラスで観てみてください。
01.『Suzi Q』(リアム・ファーメイジャー)
02.『シカゴ7裁判』(アーロン・ソーキン)
03.『37セカンズ』(HIKARI)
04.『ムッシュとマドモアゼル』(クロード・ジディ)
05.『パーム・スプリングス』(マックス・バーバコウ)
06.『ジョジョ・ラビット』(タイカ・ワイティティ)
07.『Banana Split』(ベンジャミン・カサルケ)
08.『オールド・ガード』(ジーナ・プリンス=バイスウッド)
09.『フランクおじさん』(アラン・ボール)
10.『Ordinary Love』(リサ・バロス・ディーサ&グレン・レイバーン)
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「サム・フリークス Vol.11」で上映する『子供たちをよろしく』について「ジョン・ヒューズが目を背けていた世界の物語でもある」と書いたが、彼が1984年の『すてきな片想い』から始まる一連の学園映画で「スクールカースト」というものを定義づけたことによって、その枠組みから零れ落ちた子供達に人々の目が行かなくなったという功罪はあると思う(『子供たちをよろしく』に登場する子供達は学校にすら通っていない)。そして、それは1981年から始まったレーガノミクスがアメリカ社会の格差を広げたことと、実は同調していると思う。サム・フリークスではそのような間違いを犯さない為に映画の上映と並行して児童支援も行なっているのでどうぞよろしくお願い致します。自分の行動で証明していくスタイル。