屈指のラップ巧者であり、俳優として『Punk's Dead: SLC Punk 2』では嬉々としてドワーヴス等と共演し、『ザ・ダート: モトリー・クルー自伝』ではトミー・リー役を演じていたマシン・ガン・ケリーがポップ・パンク・アルバム『Tickets To My Downfall』を発表。
最近ではヴィンス・ステイプルズがアルバム・ジャケットでグリーン・デイ『Dookie』へのオマージュを捧げたりしていたわけだが、本作はブリンク182のトラヴィス・バーカーをプロデューサーに迎えてのコラボレーション作品で、ついにポップ・パンク・リヴァイヴァルの真打ちが登場といった感じ。元々トラヴィス・バーカーはソロでヒップホップ・アルバムを作ったりしている人なのでヒップホップとパンクのバランスの取り方も上手く、トリッピー・レッドとの共演曲「All I Know」ではトラップ的なビートを隠し味的に導入していたりと、きちんと同時代性も持ち合わせている。本作に取り組むきっかけとなった「I Think I'm OKAY」で共演したヤングブラッドの楽曲群と比較してみると、彼と違ってエモさよりも疾走感重視!な姿勢にマシン・ガン・ケリーのポップ・パンク魂を見た。
ラッパーが本格的にロックをやった例としては、古くはアイスTのボディ・カウント、出自がパンク・バンドであるビースティ・ボーイズのパンク回帰作『Aglio E Olio』、リル・ウェインの『Rebirth』などがあるが、その系譜においても特に秀でた作品といえるのではないだろうか。