Daniel Johnston/Lost And Found
★★★★
秋にはドキュメンタリー映画『悪魔とダニエル・ジョンストン』が日本公開されるという絶好のタイミングで発表されたダニエル・ジョンストンの最新オリジナル・アルバム。
前作『Fear Yourself』はマーク・リンカスによる分厚いオーケストラ・アレンジのせいで個人的にはイマイチ入り込むことが出来なった。それは単純に音を重ねすぎているという事以上に、「無垢な魂が云々」といった感じで彼が必要以上にダニエルを崇めている姿が透けて見えてきてしまうのが気持ち悪かったのだ。
今作では『Rejected Unknown』を手掛けたブライアン・ビーティーがプロデューサーに復帰。再びダニエルを単なるビートルズが大好きなデブのシンガー・ソングライターとして扱い、あくまでも対等な立場で制作を進めていったのだろう。ガレージで録音した荒削りなサウンドから漂うリラックスした雰囲気を感じれば、いかにレコーディングが順調な、ストレスの溜まらないものであったかを窺い知ることができるってなもんだ。だからこそ、ダニエルも自身のルーツを題材にした直球ど真ん中の名曲「The Beatles」(オリジナルは『Yip/Jump Music』に収録)を再演する気なったのだと思う。
全体的な印象としてはシミー・ディスク時代の『Artistic Vice』に近いが、打ち込みの導入といった新機軸はあるし、何よりもダニエルがこれまでにないほど活力に満ちているのが嬉しいじゃないか。『Fun』以降では間違いなく最高の出来。ダニエル・ジョンストンの入門盤としても最適な全14曲52分。
みんなビートルズになりたかったんだ
僕はジョンみたいになりたかったんだけど
彼は死んじゃったよ
伝説のロック・グループ
今じゃ歴史の一部になっちゃってるよね
でも、信じられないかもしれないけど、
あんなお伽ばなしみたいな事が本当に起こったんだよ
4人の男の子が世界を変えたんだ
(「The Beatles」)