Amy Millan/Honey From The Tombs
★★★★★
スターズのギター/ボーカルであるエイミー・ミランが初のソロ・アルバムを発表。スターズは好きなバンドなのでそこそこの期待を持って望んだのだが、これはスターズの諸作を遥かに超えた、メアリー・ルー・ロードの『Baby Blue』に匹敵する大傑作だった。
ニューウェイヴからの影響が濃いスターズと違って、本作でのサウンドはもっとカントリー/フォーク寄り。しかも、かつてレイ・デイヴィスがマスウェル・ヒルに暮らしながら西ヴァージニアのブラック・ヒルを夢見たように、豪州バンドであるユー・アム・アイが中期リプレイスメンツを彷彿とさせるロックンロール・アルバム『Convicts』を作ったように、カナダ人であるエイミー・ミランがかつて胸を焦がしたアメリカへの想い、憧れが原動力となっているのである。トム・ウェイツの言葉からアルバム・タイトルを名付けたのも、つまりはそういう事なのだろう。
ここで歌われているのは、いつ終わるとも知れない暗闇を照らす、「ここではないどこかへ」という生きていく為の希望であり祈りだ。「72歳になっても身近に感じることのできる」普遍的な感情だ。だからこそ、自分の足元をもう一度見つめ直す必要があったのだと思う。6年以上前に書いた楽曲群を3年近くも暖めてようやく発表、という経緯からも、彼女がこれらの歌をいかに大切にしてきたかが分かるかというものだ。
隠し味程度に織り交ぜられた音響的な実験&スターズを思わせるドリーミーなキーボード・サウンドも良いアクセント。アコースティック・ギターの柔らかなコード・ストロークが、人生という道程を歩み続ける鳴り止むことのない足音のように、いつまでもいつまでも耳に残る全12曲36分。ジェニー・ルイスの『Rabbit Fur Coat』が気に入った人はこちらも是非。必聴。
YouTube: Amy Millan - Baby I (Video clip)
lucieさんのレビューも必読のこと。