レジーナ・スペクターの最新作『Far』の収録曲を聴いていて気付いたのは、「Folding Chair」は2004年のライヴですでに披露済み、「Dance Anthem Of The 80's」は2003年のライヴで披露済み、「Wallet」は2005年のライヴで披露済み、ボーナス・トラックの「Time Is All Around」も2003年のライヴで披露済みだということ。
ここから何が分かるのかというと、レジーナは新作アルバムを作るために無理矢理に曲をひねり出しているわけではなくて(別にそういうやり方が悪いとは思わないが)、日頃から常に曲を書きためていて、自分の進みたい方向性に合った曲をストックから引っぱり出してくるという、ポール・マッカートニーなんかに近いタイプの多作型シンガー・ソングライターであるということだ。ポール・マッカートニーについては『The Piano Tape』というブートレッグを聴けば丸分かりなんだが、なにしろ1977年の超特大ヒット・シングル「Mull Of Kintyre」も、1979年のアルバム『Back To The Egg』収録の「Getting Closer」も、すでにこの1974年の時点で披露されているんだから驚きだよ(ついでに書いておくと、ここでのポール・マッカートニーは完全にダニエル・ジョンストンだ)。
Put it on the Floorさんの『Far』のレビュー(「Wallet」の歌詞を訳されてもいるので必読)で書かれていた「手間をかけて凄く精巧に作られたに違いない、実際、非常にクオリティの高い作品なのに、まだまだ余裕が見える感じ」というのは、彼女のこういうところから来ているのではないかと。
↑今から5年前のこの時点で完璧に完成されている「Folding Chair」の2004年ヴァージョン。