★★★★★
まさに「待望」と言うに相応しい、3年振りとなるレジーナ・スペクターの新作。
デヴィッド・カーンがプロデュース・ワークを一手に引き受けていた前作から一転して、本作では曲ごとに異なるプロデューサーを起用する分担制となり、それによって逆にレジーナの芯の揺るぎなさが浮き彫りになる結果となった。プロデューサー陣の中で注目すべきは4曲を手掛けたジェフ・リンの存在で、だからというわけでもないんだろうが、歌詞もサウンドもレジーナ版「God」な「Laughing With」(でも飄々としたユーモラスな味わいがあるのがレジーナならでは)や、シー&ヒムの「I Was Made For You」に呼応したかのような「Folding Chair」(基本となるC→Am→F→Gというコード進行も同じだしな)なんてナンバーがあったりと、ビートリーなテイストは前作以上に濃厚。というわけで、この人のPVを手掛けていたマーク・ウェブ(「Fidelity」)が今ではズーイー・デシャネル主演の映画『(500)日のサマー』(祝! 日本公開決定!)の監督を務め、劇中でレジーナとズーイーが疑似共演を果たすことになったのはやはり必然なのだと改めて実感できたことだった。
それにしても、この人は相変わらず「人懐っこい先鋭性」というものを無理なく表現できる希有なシンガー・ソングライターで、そういう意味でもアルぺジエーターを初めて使った子供が作ったかのような軽やかな実験性とポップネスに溢れた「Dance Anthem Of The 80's」こそが本作のハイライトだ。この曲に限らず、アルバム全体の根底にヒップホップ以降の「ループ感」が息づいているのも素晴らしいやね。
『ジョンの魂』と『Ram』を融合させたかのような破格の傑作。必聴。全13曲47分。