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ビートリーな意匠をフォーク・ロック/カントリーな味付けで表現する、というシー&ヒムがやっているようなことを10年以上前から続けているのがジル・ソビュールだ。この人が不幸なのは、映画『クルーレス』の主題歌として本人が作詞作曲に関わっていない「Supermodel」がヒットしてしまったことで、それもあってか知名度の割りにはシンガー・ソングライターとして過小評価されていると思う(まあ、あれはあれで良い曲なんだけどさ)。そういう意味ではジャッキー・デシャノンに近いものがあるというか。たとえばケイティ・ペリーの「I Kissed A Girl」の元ネタがジルの同名曲であるということなんかはもっと評価されてもいいのではないだろうか。
ドン・ウォズをプロデューサーに迎えた本作でも、そのソングライティングのセンスは相変わらず冴えまくり。それはもうほとんど名人芸の域に達していて、ボビー・ジェントリーの「Ode To Billie Joe」をパロった秀逸なトリビュート・ソング「Where Is Bobbie Gentry?」(そういえばズーイー・デシャネルもボビー・ジェントリーが好きなんだった)みたいな曲を書けるのは彼女かニール・イネスぐらいってなもんだ。ユーモア・センスがありすぎるせいで世間におけるシリアスな評価がなかなか高まらないところなんかもニール・イネスっぽいんだよな。
特筆すべきは、本作がファンからの出資を基に製作されているということ。本作の発表と前後して、豪華なゲストを招いた本作収録曲のギター教則ビデオをYouTubeに次々アップしたりと、レコード業界の慣習に縛られない、「歌は人々のものである」という姿勢を強く押し出しているのが素晴らしいじゃないか。全14曲49分。傑作。
↑ダン・バーンとの共演!
↑ウェイン・クレイマー(MC5)との共演!