★★★★★
「Why Do You Let Me Stay Here?」の続編といった趣きのオープニング・ナンバー「For Beginners」でのダブルトラック・ヴォーカルのズレ具合からして、これまでになくビートリーなM・ウォードの6thアルバム。
というわけで、本作の肝は「ビートリー」という点に尽きる。この方向性は前作『Post-War』におけるダニエル・ジョンストン「To Go Home」のカヴァー(ダニエルの音楽的なルーツがビートルズであることをきちんと踏まえている名カヴァー!)の発展形なわけだが、ここまでビートリーなテイストが前面に出ることになったのは、やはりシー&ヒムとしての活動が契機になったと考えて間違いないと思う。
バディー・ホリーの「Rave On」と、ドン・ギブソンの、というよりはニール・ヤングの「Oh Lonesome Me」というカヴァー・ナンバーの選曲からしてシー&ヒムの延長線上にあるビートリーなものだし(シングル「Why Do You Let Me Stay Here?」のカップリング曲としてニール・ヤングの「Lotta Love」をカヴァー)、シー&ヒムでの相方であるズーイー・デシャネルのコーラスが大々的にフィーチャーされてカラフルになったサウンドも非常にビートリー。ココナッツ・レコーズの新作『Davy』との符合も強く感じるぞ。ズーイー・デシャネルから広がるビートリー・ムーヴメント。全14曲43分。ズーイーが言っている通りで、文句なしにM・ウォードの最高傑作だ。