レジーナ・スペクターの最新作『Far』で起用されたプロデュサー4名のうち、デヴィッド・カーンとマイク・エリゾンドとジャックナイフ・リーは2008〜2009年の時点で第一線で活躍するプロデューサーなんだけど、ジェフ・リンだけが例外的だ。
レジーナが「Real Love」をカヴァーした時に、おいらは「1980年生まれでビートルズのアンソロジー・シリーズの直撃世代である彼女は、「ジョン・レノンのカヴァー」というよりは、あくまでも「ビートルズのカヴァー」がやりたかったんだと思うね」と書いたんだが、ジェフの業績をそれほど知らなかったというレジーナが『Far』で彼を起用したのは、「Real Love」のプロデュサー、つまり「ビートルズのプロデューサー」との仕事をしたかったからだと思うのだ。計3人いる「ビートルズのプロデューサー」の中で、ジョージ・マーティンは10年以上前に引退宣言を出しているし(歳も歳だしな)、フィル・スペクターは殺人犯だしで、現実的に唯一仕事を依頼できそうなのがジェフ・リンなんだよね(もちろん「裏技」としてジェフ・エメリックやクリス・トーマス、さらに言えばグリン・ジョンズを起用する手もある。ホワイト・アルバムなんて実質的にはクリス・トーマスの貢献がかなり大きいし)。
とか書いてみたけど、実際のところは、レジーナがトム・ぺティの『Highway Companion』におけるジェフの仕事っぷりを気にいってオファーを出したのだそうだ。でも、トム・ぺティはトラヴェリング・ウィルベリーズのメンバーでもあるわけで、どんな辿り方をしてもビートリーになってしまうってのがレジーナの面白さだし、この時代にブレイクするべくしてブレイクした要因でもあるなあ、と。さらにこれは蛇足になるんだが(でも重要な蛇足だと思う)、レジーナの音楽が持つ世界観を見事に映像化した「Us」のPV、そして『Far』からの先行シングルとなった「Laughing With」のPVの監督は、トム・ぺティの娘のエイドリア・ぺティなのである。
↑映画『(500)日のサマー』の予告編でもフィーチャーされている名曲。
http://www.youtube.com/watch?v=rov3pV9PsRI
『Far』のスペシャル・エディションをお持ちの方はお分かりのように、「Eet」や「Dance Anthem Of The 80's」、そして「Human Of The Year」のPVはレジーナとエイドリアの共同監督によるホームメイド作品。