『ガラスの城の約束』が日本でも公開されて、(予想していたとはいえ)加藤るみのゴミみたいな感想のさらに劣化コピーみたいな煮え切らない感想がツイッターで垂れ流しになっていて絶望的な気分になっている。シカゴ・サン・タイムズのリチャード・ローパーは「役者の演技が素晴らしいからといって、この両親がした仕打ちは決して許されるべきものではない。こんな恐ろしい人間を許せだって? 冗談も休み休み言え」とはっきり言っているけど、真っ当な人間だったらこれぐらいのことは書かなきゃいけないと思う。この物語の著者であるジャネット・ウォールズは両親と共依存関係にあり、最後までそこから抜け出せないというやるせない話なんだが、本人はおそらくそれに気付いていない。ブリジット・ランディ=ペイン演じる彼女の妹がカリフォルニアに移住して家族との関係を断とうとしたのはどうしてかを考えれば、受け手にはそれが見えてくると思うんだが。まあ、監督のデスティン・ダニエル・クレットンの(『ヒップスター』でも垣間見えた)「甘さ」がそれを分かりにくくしているフシはある(だから映画としては失敗作でしょう)。
とはいえ、そんな絶望的な気分も6月18日まで! なぜならその翌日には大傑作『インスタント・ファミリー 本当の家族見つけました』がリリースされるから! 擬似家族映画の最高峰! 『ショート・ターム』の魂はこちらに受け継がれています。
■
『Five Feet Apart』はモロにヘイリー・ルー・リチャードソン版『きっと、星のせいじゃない。』でした(ただし、『きっと、星のせいじゃない。』のように「OK」で終わらせる潔さはなかった)。
■
映画『マーダー・ミステリー』(監督:カイル・ニューアチェック)観賞。★★★★★。
アダム・サンドラーの新作は『影なき男』シリーズの系譜に連なる「おしどり夫婦探偵もの」。今のアダム・サンドラー映画でも脚本がしっかりしていればきちんと面白くなるという好例で、近年のハッピー・マディソン社の作品の中ではダントツに出来が良いのでとりあえず絶賛しておく。アダム・サンドラーの役名が「ニック」でウィリアム・パウエル風の口髭を付けており、「最後に主人公達が関係者全員を一堂に集め、犯人を名指しする」という作りになっていることからも『影なき男』からの影響は明らかだが、彼の妻を演じたジェニファー・アニストンの役名が「オードリー」って、もしかしてオードリー・ヘプバーン→『シャレード』という連想なんでしょうか。『影なき男』も『シャレード』も、どちらも往年のハリウッドの洒落たコメディ風味のミステリー・サスペンス。今回の『マーダー・ミステリー』もよくよく考えると人が死にまくる物騒な内容ではあるものの、ハッピー・マディソンらしい能天気なユーモアが上手くそれを和らげている。監督は『コミ・カレ!!』や『ゲームオーバー!』を手掛けてきた新鋭カイル・ニューアチェックで、いつものスティーヴン・ブリル/デニス・デューガン/フランク・コラチといった馴れ合っている監督を起用しなかったことで97分というタイトな仕上がりになった、と思う。
■
SANTAWORLDVIEWはTENG GANG STARR / kamui絡みで2回ライヴを観てるけど、ほんの2ヶ月で人気が一気に爆発しててマジで凄いと思った(「Pink juice」で巻き起こる大合唱!)。件の「Pink juice」は「マリファナ鼻から摂取」というフレーズがパンチラインすぎる。尾崎豊の「Freeze Moon」ばりの間違い(「ドラッグクイーン」を女装家ではなくて「麻薬の女王」だと勘違いしている)と言えなくもないんだけど、言っていることがメチャクチャであるが故に逆にヤバさを感じさせるという。
■
★★★★★
2019年末にリリースが予定されているアルバム『She Is Miley Cyrus』からの先行EP第一弾(このあと『She Is Here』『She Is Everything』とEPが続いてアルバムがリリースされるとのこと)。前作『Younger Now』がカントリー回帰な内容だったのに対して、今回は再びマイク・ウィル・メイド・イットとのコラボを含む『Bangerz』路線のヒップホップ色が濃い目な内容。これはどちらの方がマイリー・サイラスらしいかという話ではなくて、もともと彼女はドリー・パートンをゴッドマザーに持つルーツに根差したカントリー畑の資質と、コンテンポラリーなポップ・シンガーとしての資質の両方を兼ね備えているのだから、どちらも彼女の一面に過ぎないのだと思う。だから『ハンナ・モンタナ』の二重生活/二重人格という設定は彼女そのものだったのであり(実際に役名も「マイリー」だったし)、本作から始まるEPシリーズはそんな彼女の多面性を見せる内容になっていくのではないかと予想。
とはいえ、「Don't Fuck With My Freedom(私の自由を邪魔するな)」と力強く宣言する(かつての「Liberty Walk」を彷彿させる)「Mother's Daughter」から始まる本作の久しぶりのハジケっぷりはやっぱり最高である。ル・ポールの参加も、前作でドリー・パートンが参加していることを考えれば筋の通った人選であるわけで(『ダンプリン』を観れば分かるように、ドリー・パートンはLGBTQコミュニティから強い支持を受けているシンガーである)、とにかく頼もしいことこの上ない。