The Decemberists/The King Is Dead
★★★★
ディセンバリスツのリーダー/ソングライターであるコリン・メロイは、リプレイスメンツ『Let It Be』の解説本の著者でもあるわけだが、それが出版された際に「解説本と称して自分の子供時代の思い出話ばっかり書いてんじゃねえ」とか「もしこんなインディー・ロックかぶれのクソガキが自分の目の前にいたらブン殴ってるよ」とか読者から散々こき下ろされていたのが印象深い。おそらく彼はいい歳ブッこいて自己相対化ができていない人なのだろう、そう考えると近年のディセンバリスツが時代と逆行するかのように長尺ロック・オペラづいていたのも納得がいく。
しかし今回は一転してシンプルなギター・ロック・ナンバーが詰め込まれた全10曲40分のタイトなアルバムなのだった。もしかしたらジリアン・ウェルチやピーター・バック(R.E.M.)といった自分達よりも遥かに上の世代の(自分達が敬意を払ってきた)ミュージシャンがゲスト参加したことによって、コリン・メロイも強制的に自己相対化を行わざるを得なかったのかもしれない。特にピーター・バックの参加は本作の作風に大きな影響を与えたのではないかと思う。もともと彼等は以前からR.E.M.色の強いバンドではあったんだが、本作では「Calamity Song」がモロに「Little America」だったり、「Down By The Water」がモロに「The One I Love」だったりと、ピーター・バックと一緒にR.E.M.っぽいギター・ロックを演りたかったんだね、というのが伝わってきて微笑ましいぐらいだ。また、「All Arise!」がモロにブルース・スプリングスティーンの「Waitin' On A Sunny Day」だったりと、これまでにないほどあっけらかんと自分達のルーツ/ネタ元を明らかにしているのが、本作の風通しの良さにつながっていると思う。そんな風に考えていたら、コリン・メロイの歌声もだんだんフリーディー・ジョンストンみたいに聴こえてきたなあ。
↑ディセンバリスツといえば映画『天才マックスの世界』のパロディである「Sixteen Military Wives」のPVを忘れちゃいけないぜ。