★★★★★
『Dilettantes』から2年を経て発表されたユー・アム・アイの9thアルバム。通例からすると(ティム・ロジャースの多作な作曲能力を反映して)ティム兄やんのソロ・アルバムが挟まれるところだが、2009年の彼等はツアーに明け暮れ、本作の製作資金をコツコツと積み立てていたのだった。そう、本作は彼等にとって初めてレコード会社からのバジェットを一切受けることなく、つまり初めて「Complete Control」を手に入れて製作されたアルバムなのだ。セルフタイトルを冠したのも納得である。
というわけでバンド所有のスタジオで誰にも気兼ねすることなくレコーディングが進められた本作は、「ユー・アム・アイの魂」をそのままゴロリと提示したかのような、前作以上に混沌とした生々しいバンド・アンサンブルが展開。改めて彼等の「バンド力」の高さを強く実感できるギター・ロック・アルバムとなった。ティムの書く流麗なメロディも相変わらず冴えまくりで、メーガン・ワシントン(!)とレイニー・レイン(デイヴィ・レインの妹)のコーラス・ワークが楽曲に華を添えているのも嬉しい。バンドの新たな一歩を飾るにふさわしい文句無しの傑作。全11曲41分。
そういえばウェリントンズの浅野浩治氏もユー・アム・アイについてのコラムを書かれてますね。
↑「Complete Control」のおかげで、先日のオーストラリア・ツアーでおいらのような糞虫でもオーストラリアのナンバー1ロックンロール・バンドである彼等とすんなり会うことができたわけで。彼等のライヴを初めて生で観て、そのバンド・アンサンブルがあまりにもタイトなことに驚かされたんだが(おいらが何百と観てきたバンドの中でも歴代ベスト)、それは本作にもしっかりと刻み込まれている。
↑変な曲!
↑メーガン・ワシントンってジャズの英才教育を受けたお嬢様であると同時に、ユー・アム・アイと交流があったり、リプレイスメンツが好きだったり、ティム・フィンが好きだったり、チャーチの「Unguarded Moment」をカヴァーしていたり、ディヴァイナルズの「I Touch Myself」をカヴァーしていたり、フードゥー・グールーズ(先日はマフスと一緒にスペインをツアーしてましたな)のTシャツを着ていたりと、オーストラリアの気さくなロック姉ちゃんとしての顔も持っているのが素敵。それは彼女の楽曲の親しみやすさと決して無関係ではないと思う。