Various Artits/We'll Inherit The Earth: A Tribute To The Replacements
★★★
後期リプレイスメンツばかりを褒めそやすのは、『Pet Sounds』以降のビーチ・ボーイズを褒めそやすようなものだ。パンク・バンド時代の初期リプレイスメンツを、サーフ・バンド時代の初期ビーチ・ボーイズを軽視するような輩は信用ならねえぜ!
そういう意味でいうと、このトリビュート・アルバムの初期から後期まで偏ることのない選曲はあまりにも「分かっている」。1曲目からしていきなりアーグス(アンラバブルズのドラマーでもあるマイキー・アーグのバンド)による「I'm In Trouble」(名曲!)だし。クイアーズが「Unsatisfied」のカヴァーで参加しているのも嬉しい。ジョー・クイアーはDOLL誌最新号のインタビューで最新作のタイトルがジーザス&メリー・チェインに対するオマージュであることや、自身がレモンヘッズのファンであることを公言していたので、それを考えれば本作への参加は必然といえるだろう。
そもそも、リプレイスメンツというバンドが同時代に活躍したギター・ロック・バンドであるスミスやR.E.M.等と一線を画していたのは、文学青年的な素養がほとんど感じられなかった(≒スノッブな雰囲気を漂わせていなかった)という点に尽きるのであり、だからこそアメリカの地方都市で暮らすはみ出し者達の心を捉えて放さなかったのだ。たとえばクイアーズなんて、バンド名自体が当時のアート・ファグ・シーンに対するイヤミなわけで、スミスなんかとは正反対の立ち位置にいるバンドだしね。
本作はそんなリプレイスメンツの「いなたさ」を継承したバンド達が鳴らす、リプレイスメンツへのロックンロール・ラブレター。ブックレットを見ると、どいつもこいつも冴えないルックスの連中ばかりで堪らんねえ。全23曲62分。