The Queers/Grow Up (remixed and remastered)
★★★
アジアン・マン・レコーズから相次いで発売されているクイアーズのリマスター盤シリーズ第4弾。本作はこのシリーズの中で最も大きく生まれ変わった作品といえるだろう。何よりも特筆すべきは、オリジナル盤での、ヴォーカルが極端に小さくて聴くに耐えなかったミックスが、リミックス&リマスターによって聴くに耐え得るレベルにまで改善されているということだ。さらに曲順もオリジナルとは全く違うものになっているので、これはもう全く新しい作品と考えるべきなのかもしれない。
そんなことを思いながらライナーノーツを読んでいると、ジョー・クイアーが「『Grow Up』は好きなアルバムだ」と書いているので驚く。だが、確かにこうしてまともなミックスで聴いてみると、それぞれ楽曲の骨格自体は現在のクイアーズのそれに非常に近かったりするのだな。そしてソングライティングの面でも、特に「Boobarella」や「I Met Her At The Rat」といった代表曲は、実は次作『Love Songs For The Retarded』以上の出来だったりするのだった。
本盤でアルバム本編の最終曲として置かれたモンキーズのカヴァー「I'll Be True To You」(ホリーズによるオリジナルのタイトルは「Yes I Will」なので、ジョー・クイアーがモンキーズ・ヴァージョンを意識しているのは確実)は、ジョー・クイアーの一貫したバブルガム・ポップ趣味を証明するもの。ちなみに、この曲はジェリー・ゴフィンとラス・タイトルマンの共作なんだが、最新作『Munki Brain』ではゴフィン=キング作品の「I Can't Stay Mad You」をカヴァーしていたので、ジョー・クイアーってもしかしたら(キャロル・キングではなくて)ジェリー・ゴフィンが好きなのかもね。そして、もしかしたらもしかして、『Munki Brain』というアルバムは、ジョー・クイアーにとっては原点回帰的な意味を持つ作品なのかもしれない。少なくとも、そう考えさせてしまうだけの魅力が、本盤にはあるということだ。全17曲50分(ボーナス・トラック5曲含む)。