特集上映:サム・フリークス Vol.13
5月30日追記:緊急事態宣言が6月20日まで延長されましたが、「サム・フリークス Vol.13」は当初の予定通り6月6日に開催いたします。なお、座席を間引いての開催となり、ご入場は前売り券をご購入された方のみとします(当日券は販売いたしません)。また、当日はロビー・場内でのマスク着用および検温・消毒・手洗いなどの感染症予防対策にご協力お願いします。
特集上映イベント「サム・フリークス」の第13回! 今回は名匠ハーバート・ロスの怪作ミュージカル『ペニーズ・フロム・ヘブン』とグレッグ・アラキの最高傑作『スマイリー・フェイス』を2本立てで上映いたします。
どちらもこれを逃すとなかなか劇場では観ることができないであろう貴重な作品で、しかも2本とも日本初上映ですので、この機会にぜひー。今回も有料入場者1名につき250円が虐待を受けたり貧困下にある子供達への学習支援&自立支援として役立てられます!
8月7日(土)には同会場でイベントの第14弾が、10月24日(日)にはイベントの第15弾が開催されます! こちらもぜひ!
概要:
1)日時:2021年6月6日(日)
2)会場:ユーロライブ(渋谷)
タイムテーブル
13:00~ 当日券販売開始
13:20~ 開場
13:35~『ペニーズ・フロム・ヘブン』上映(日本初上映)
15:23~ 休憩
15:35~『スマイリー・フェイス』上映(日本初上映/17:00上映終了予定)
3)当日券料金:2本立て1500円(入れ替えなし・整理番号制)
※当日券は当日の13時00分より会場受付にて販売いたします。
※前売り券は特別価格1374(悲惨な死)円でPeatixにて販売中です。
本イベントはすべての子供達が社会から孤立することなく暮らしていけるようになることを目的とした学習支援や自立支援の為に、有料入場者1名につき250円を「認定NPO法人 3keys」へ寄付いたします。後日、当ブログにおいて寄付の実施をご報告いたします。
お金に困っている方は、ご相談いただければ当イベントに無料でご招待いたしますのでお気軽にご連絡ください。
また、未成年の方は当日会場にて500円返金します!性善説の自己申告制で、身分証チェックとかイチイチしないので、「無料にしてもらうのは気まずいけど、1374円払うのはキツい…」という方はこちらの制度をご利用していただければと思います。
お腹が空いている方は、事前にご連絡いただければ入場時におにぎりを差し上げます。食べられないおにぎりの具がある場合は、それも併記していただけると助かります。
こちらは当イベントの主催者に向けた救援物資を掲載したAmazonのほしい物リストになりますので、お金に余裕のある方はサポートしていただきたく思います。何卒よろしくお願い致します。
※前売り券について※
開場は13時20分です。整理券等への引き換えの必要はございませんので、劇場への入場時にPeatixのチケット画面、もしくは予め印刷したものを係員にご提示お願いします。入場順序に関しては、前売り券→当日券の整理番号順となります。場内は全席自由席となっております。入金後のキャンセルは承りかねますのでご了承ください。
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「サム・フリークス Vol.13」は「サム・フリークス Vol.12」の内容を引き継いで音楽と薬物についての映画を上映する。
『ペニーズ・フロム・ヘブン』は1978年にBBCで放送された同名のテレビドラマを基にした、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の元ネタにもなった怪作ミュージカル。大恐慌時代のシカゴを舞台に、ミュージカル映画の世界を夢見て生きている楽譜のセールスマンが転落していく様を描いた物語で、監督のハーバート・ロスがダンサー/振付師であった出自が存分に発揮され、主演のスティーヴ・マーティンが歌い踊る! ただし、口パクで。そう、本作は通常のミュージカル映画とは違い、役者が実際に歌うのではなく、1930年代の音源がそのまま使われているのだ。これによって主人公が夢見ている世界があくまでも幻想に過ぎないことが強調されていき、何とも言えないおかしみと悲しみが生まれているのだった。主人公達がアステア=ロジャーズ映画の傑作『艦隊を追って』とシンクロしていくシーンは鳥肌もの。エドワード・ホッパーの『ナイトホークス』と『ニューヨークの映画館』へのオマージュや、クリストファー・ウォーケンのタップダンスにも要注目だ。
『スマイリー・フェイス』は私見ではグレッグ・アラキの最高傑作。90年代の「Teen Apocalypse Trilogy(10代の終末3部作)」で抱えていた終末感を『スプレンダー/恋する3ピース』を契機として脱却し、「それでも続いていく人生」を描くようになった彼の一つの到達点である。徹底的にアホなマリファナ・コメディでありながら、主演のアンナ・ファリスの名演も相まってラストでは「高速道路の脇でゴミ拾いをするような人生になっても、私は生きていける」というタフネスすらをも感じさせ、REOスピードワゴンの「Keep On Lovin' You」が深い余韻を残す。自作脚本でゲイであることをメインモチーフとして作品を撮り続けてきたグレッグ・アラキにしては珍しい、他人に脚本を任せた非ゲイ映画で、以降の彼の商業ベースに乗った幅広い活動は本作があったからこそといえるだろう。
岡俊彦(東京都品川区南品川3-5-2-503在住)
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世界広しと言えど、スティーヴ・マーティンが口パクで歌い踊る『ペニーズ・フロム・ヘブン』とアンナ・ファリスがマリファナで終始ラリった『スマイリー・フェイス』の二本立て上映はないだろう。
前者で人々は大恐慌の時代の厳しさの中にいる。ミュージカルにも関わらず、光と影の交錯する夜街の静寂と孤独を描いたエドワード・ホッパーの絵画が参照され、彼らの歌うに歌えない心理や願望を1930年代の流行歌の口パクで探るという強烈なコントラスト。あるいは、妻(ジェシカ・ハーパー)に性的な要求を続けた挙句、違う女性に乗り換える楽譜販売員の主人公が破綻していくというファンタジーの様式を装って語られる絶望。このジャンルの欺瞞や矛盾を誇張したシニシズムに満ちたまさに怪作……この試みがなければ『ラ・ラ・ランド』も生まれ得なかったかもしれないと考えるのは大げさだろうか……?
大いなる鬱の後には抗鬱剤が必要だ。しかし、2本目の映画では、オーバードーズして躁状態に陥ってしまった女優志望のジェーン・Fが辿る長い1日が描かれる。酩酊状態の非論理的な思考回路そのままに進んでいくが、愚かな失態を続ける怠け者は男性の特権だったかもしれない。その意味では、女性主体のストーナー・コメディの先駆的な作品とも言え、ニュー・クィア・シネマを代表するグレッグ・アラキはブロンド白人女性を性的な対象ともトロフィーとも表象しない。視覚的なイメージの女性を消費しないまなざしは、特に食肉工場の場面で一層意味深なものとなる。そこで彼女は金儲けのために豚が屠畜され、暴力と支配の構造が隠蔽されていることを糾弾する──それは空想ではあるのだが。解体され(肉の加工処理の過程が挿入される)、消費される搾取のシステムが、動物の虐待であり、同様に労働者を無思考の存在として扱う父権的文化を忠告するのである。また、売人とレーガノミクスの議論を繰り広げ、「共産党宣言」に惹かれる彼女は、高学歴ながらも定職に就けない時代の若者固有の歴史を背景に持つだろう。
どちらも煌びやかなミュージカルや能天気なコメディが約束する幸福は訪れない。彼らなりの方法で暗い現実と距離を取らねばならなかった者たちの物語とも言うことができるかもしれない。たとえ人生がままなかろうと、彼らは白痴ではあるまい。少なくともお金でしか物事の価値を換算できない政治家とは違うということだ。
(映画ライター・常川拓也)
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『ペニーズ・フロム・ヘブン(原題:Pennies From Heaven)』(1981年、監督:ハーバート・ロス)
Blu-ray上映(日本語字幕付き)
1982年 アカデミー賞 脚色賞、衣装デザイン賞、音響賞ノミネート
出演: スティーヴ・マーティン、ジェシカ・ハーパー、バーナデット・ピータース、クリストファー・ウォーケン
『スマイリー・フェイス(原題:Smiley Face)』(2007年、監督:グレッグ・アラキ)
Blu-ray上映(日本語字幕付き)
出演: アンナ・ファリス、ジョン・クラシンスキー、アダム・ジェーン・リンチ、ジョン・チョー
主催:岡俊彦
お問い合わせ先:岡俊彦(電話:080-4065-3412 メール:hardway@ba.mbn.or.jp)