★★★
グライム・シーンとの決別&自身の引退を示唆した傑作『Playtime Is Over』を2007年に発表したと思ったら、翌年には『Grime Wave』(オリジナル・アルバム扱いはしないようだ)で緩やかに復活、そしてホット・チップやマーク・ロンソン等とのコラボレーションを含む『See Clear Now』で遂にメジャー進出!のはずが、本人にとっては不満しか残らなかったようで、仕切り直しとばかりに発表されたのが本作だ。
でもさあ、『See Clear Now』って、『Playtime Is Over』には及ばないにしても、実はかなり出来の良いアルバムだったんだけどね。本人曰く「とてもじゃないが聴いちゃいられない」と評した「Summertime」なんてかなりの名曲だと思うし(PVも含めてデヴ・ラージの「Music」にも通じるポップなオールドスクール感があって素敵)。で、代わりに発表されたのが『Grime Wave』に通じるグダグダ感満載の本作なんだから困ってしまう。要するにワイリーって自身のアーティスト性とコマーシャリズムの落としどころを未だに掴めていなくて、契約なんかに縛られずにミックスCDやストリート・アルバムをガンガン発表していきたい、どこまでもストリート気質なラッパーなのだろう。そういう意味でいうと、ソヴ子の自己プロデュース能力ってやっぱり凄く高いんだよな(ま、それが鼻につくって人もいるんだろうが)。