★★★★
ワイリーというラッパーのキャリアの迷走は、グライム・シーンの中心にいながらも、同ムーヴメントの全盛期にレディー・ソヴァリンや(ロール・ディープでの同僚だった)ディジー・ラスカルのように賢くメイクマネーできなかったことから始まっていると思う。
だから、その後はセルアウトしようとしても妙に投げやりだったり(歌詞が1ヴァースしかない「Wearing My Rolex」の衝撃)、ロール・ディープでは「今夜もぽいぽいぽいぽぽいぽいぽぴー」で刹那的な「Good Times」を過ごしたりしていたわけだけど、本作ではEDMの流行に乗りながら「ダイヤモンドが降ってくるのを待ち続けて時間を無駄にするのはもうやめた」(「Tomorrow」)と気合十分。エミリー・サンデーのゲスト参加などの効果もあるにせよ、実際に彼のアルバムの中では過去最高のチャート・アクションを記録しているし、ようやくラッパーとしての底力を世間に見せつけることに成功したといえるのではないだろうか。苦節十年、ついにワイリーの時代がやって来た!と感慨にひたっていたら、シングル・カットのチョイスでレコード会社と衝突したらしく(何度目だよ)、先日ワーナーからの離脱が発表されたのだった。やっぱり相変わらず迷走してんなー。