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大傑作『Public Warning』から2年半を経て発表されたレディー・ソヴァリン(今度日本盤が出るとしたら「ソヴリン」表記に戻るのかしら?)の2ndアルバム。
アリスタ時代のキンクスを思い浮かべてもらえれば分かるように、英国人はアメリカ市場を向いたアーティストに冷たい。『Public Warning』が本国でそれほど売れなかった原因もまさにそこにあるような気がする。実際にアメリカ盤の方が4ヵ月も先行発売されていたわけだし。だから、というわけでもないんだろうが、デフ・ジャムを離脱&EMI傘下に自らのレーベル、ミジェット・レコーズを設立しての再出発となる本作は、自身の立脚点を見つめ直した英国回帰な内容になっているのだった。「Love Me Or Hate Me」のようなアメリカ市場狙いのナンバー(これはこれで名曲なんだけど)は姿を消し、サウンドはエレクトロニック・ポップ色/フロア志向を前面に押し出したものに。キュアーの「Close To Me」を引用した先行シングル「So Human」はそんな本作を象徴するナンバーといえるだろう。
ソヴ子のラップの方も言葉数をグッと減らし、前作でもうかがえた、人懐っこい「うた」志向がさらに強まっているのが嬉しい。まあ、パンク・ロック的なダイナミズムが減退していることもあって、ロック・ファン及びアメリカのメディアからはあまり良い評価を受けないと推測されるわけだが、そもそもソヴ子はラッパーなんだしさあ(本人もそこらへんについてはほとんど気にしてないと思う)。もちろん本作が『Public Warning』を超えているとは全く思わないし、過渡期の作品であるとも思うんだが、たとえばキンクスの『Misfits』がそうだったように、過渡期ってのはアーティストの素の部分/本音が露わになるから面白いんだよな。暗めのナンバーが多いとはいえ、ソヴ子のユーモア・センス/ポップネスはやはり唯一無二(「I Got The Goods」での「鳥だ! 飛行機だ! いや、ソヴ子だ!」って歌詞には笑ったよ)。相変わらずフィーチャリング・ゲストに頼らないガチンコな作りも頼もしい。傑作、と断言してしまおう。全10分35分。
↑セレブ気取りのビッチをコケさせるシーンが最高!
↑映画『ウォリアーズ』のパロディ!