Noah And The Whale/Last Night On Earth
★★★★★
ノア・バームバックの映画『イカとクジラ』からバンド名が付けられたことでお馴染みのノア&ザ・ホエールの3rdアルバム。2008年の1st『Peaceful The World Lays Me Down』は文句なしの傑作だったものの、リーダーのチャーリー・フィンクがバンドの準メンバーでもあったローラ・マーリングに失恋して2ndの『First Days Of Spring』でクダを巻いているうちに、ローラは本格派のトラッド・フォーク・シンガーへと成長してしまうわ、後輩格のマムフォード&サンズは本国イギリスのみならずアメリカでも大ブレイクを果たしてしまうわで、彼等が後塵を拝している感は強くなっていく一方だった。
だからこそドラスティックな変化を!と思ったのかは知らないが、今回はアルバム・タイトルでチャールズ・ブコウスキーへのオマージュを捧げつつ、サウンド面においては彼等の特徴であったトラッド・ロック色を一気に薄め、代わりにエレクトロニック・ポップ色を強めるという勝負に出てきた。もともと、この人達は前述のローラ・マーリングやマムフォード&サンズのような「本格派」ではない、ということに起因する軽みこそが魅力だったわけで、表面上の音楽性が変化してもバンドの本質的なそれは揺るがないという確信があったのかもしれない。結果的にはアップテンポなナンバーが増え、チャーリー・フィンクの人懐っこいメロディ・センスが際立たされ、全10曲33分のコンパクトかつキャッチーなポップ・ソング集に仕上がったのだから、見事な成功作と言っていいだろう(チャート的にも前作を遥かに上回る成績を残している)。ちなみに、おいらのライフワークとして「フーの『Baba O'Riley』のパクリ曲を集める」というのがあるんだが*1、本作の「Tonight's The Kind Of Night」はまさにその系譜に連なる楽曲であり、しかも先行シングルの「L.I.F.E.G.O.E.S.O.N.」はモロにキンクスの「Lola」なのだから、個人的にはどうしたって愛さずにはいられないのだった。現時点で今年のナンバー1アルバム。
そ し て 人 生 は 続 い て い く !
↑ウェス・アンダーソンへの愛が込められまくった名PV。『ファンタスティック Mr.FOX』が公開されている今だからこそ改めて聴きたい&観たい1曲ですな。
*1:ニック・ロウの「平和と愛と理解」とか、ブルース・スプリングスティーンの「Badlands」とか、ジザメリの「Halfway To Crazy」とか、THE HIGH-LOWSの「十四才」とか、アヴ子の「Runaway」とか。