Silver Sun/Silver Sun (Special Edition Expanded)
★★★★
1997年に発表されたシルヴァー・サンの1stアルバムはナイジェル・ゴッドリッチの初期プロデュース・ワークの代表作であり、パワー・ポップ史にその名を残す傑作だが、その拡大版がiTunes Storeで去年の暮れにひっそりとリリースされてたって知ってた? おいらもこの夏に入るまで知らんかったっすよ。
しかも、拡大スケールが尋常じゃない。当時のシングルのB面曲や未発表曲、デモ・テイクなどを24曲(!)も追加するという大盤振る舞いで、全38曲111分というメガ盛りデラックス・エディションなのだ。そしてお値段は据え置きの1500円! まあたしかに今の音楽業界の状況だと旧作のデラックス・エディションはそれなりにセールスが期待できるアーティストでないとCDでのリリースは難しいだろうから、こうやってiTunes Storeを利用するのはアーティストにとってもファンにとっても有益な賢いやり方だと思う。
本作の最大の注目ポイントは、なんといってもオリジナル・アルバムに収録されていた14曲が全てデモ音源でも収録されているという偏執狂っぷり。どれも宅録音源の時点で(つまりナイジェル・ゴッドリッチの手が加わる前の段階で)すでにほぼ完成形なのだから恐れ入る。彼等の3rdアルバム『Disappear Here』も4th『Dad's Weird Dream』(彼等の最高傑作だと思う)も基本的にはジェームズ・ブロード1人でほとんどの楽器を演奏した宅録アルバムだったが、あれらが一朝一夕で生まれたものでないということがこのデモを聴くとよく分かる。
この後、彼等はマフスの「I'm A Dick」をカヴァーしたりして『Neo Wave』に到達するわけですな。