The BPA/I Think We're Gonna Need A Bigger Boat
★★
ノーマン・クックが歌ものに回帰した新プロジェクト、なんだけど相変わらず自分で歌わないのはどうしてなんだろう? カニエ・ウェストですら自分で歌っている時代なのに。ハウスマーティンズが流麗なコーラス・ワークを誇ったバンドだった(『Live At the BBC』の収録曲は半数がアカペラ・ナンバーだ)ことからも分かるように、ノーマンの歌唱力に問題があるわけでもないのに。本作のアルバム・タイトルは映画『ジョーズ』におけるロイ・シャイダーの名台詞から採られているんだが、『ジョーズ』って臆病者のロイ・シャイダーが恐怖を克服して自分自身でジョーズをブッ殺して終わる映画なんだから、こんなタイトルを付けるぐらいだったら自分で歌おうぜ>ノーマン。
で、ノーマンが歌わない代わりにイギー・ポップやデヴィッド・バーン、ジェイミー・Tといったゲストが歌っているんだが、せっかくハウスマーティンズ・フォロワーのジャック・ペニャーテが参加してくれたっつうのに、ギターだけ弾かせて歌わせないとはどういうことだよ! ノーマンにはペニャーテにハウスマーティンズ風ギター・ポップ・ナンバーを歌わせるような懐の深さはないってことか。アルバム全体にこうした思い切りの悪さが表出していて、参加メンバーが豪華なわりにはどうにも小ぢんまりと纏まってしまっている印象。
ちなみにおいらはニック・ロウ「So It Goes」のカヴァー目当てで本作を購入したんだが、これも中途半端なアレンジが施されて原曲の痛快なポップネスが殺されてしまっていてガッカリ。この曲はクリック・ファイヴが少し前に素晴らしいカヴァー・ヴァージョンを披露していることもあって、BPAの印象は悪くなるばかりだ。あと、本作の日本盤ではこの曲のサビ(「And so it goes and so it goes / And so it goes and so it goes / But where it’s going, no one knows」)の対訳が「過ぎて行く 過ぎて行く/過ぎて行く 過ぎて行く/どこへ行くのかは誰も知らない」ってなってるんだけど、ここはきちんとカート・ヴォネガットの『スローターハウス5』に則って、「そういうものだ そういうものだ/そういうものだ そういうものだ/でも、これからどうなるかは誰にも分からないのさ」と訳すべきでしょう。
The Housemartins - Caravan Of Love
The Click Five Play So It Goes Live @ BusRadio
Rockpile - So It Goes
↑YouTubeでいくつか観れるニックたん自身の「So It Goes」の中では、ロックパイルで披露しているこのヴァージョンが最高! 超ロッキンな、いなたすぎるグルーヴにシビレまくり!
Rockpile - Heart