Helen Love/It's My Club And I'll Play What I Want To
★★★★★
『Love and Glitter, Hot Days and Music』から約7年振りに発表された、デビューから14年目にしてようやく2枚目となるオリジナル・アルバム。
ガールパワーを高らかに歌い上げたデビュー・シングル「Formula One Racing Girls」から本作に至るまで、ヘレン・ラヴの楽曲の根底に一貫して流れ続けているのは、「仲間外れでも、1人ぼっちでも怖くない! やる気があれば何だってできる!」という直球のDIY精神だ。今回のアルバム・タイトル『It's My Club And I'll Play What I Want To』にしたって、「私の人生なんだから、私の生きたいように生きるわ」という意味だし。そして、ヘレン・ラヴが偉いのは、それを自らの身でもってきちんと証明してきたことなのだ。なにしろ、ヘレン氏はラモーンズを愛して、愛して、愛し続けて、最後にはジョーイ・ラモーンとの共演まで果たしてしまった人だからな(その模様は『Love and Glitter, Hot Days and Music』収録の「Punk Boy」と、ジョーイ・ラモーンの遺作『Don't Worry About Me』に収録された「Mr. Punchy」で聴ける)。
そもそも、ヘレン氏にオーセンティックなバンドを組めるような(彼女のオタク趣味について行けるような)音楽仲間がいなかったことで、「ドラマーがいないんだったらドラム・マシーンを使えばいいじゃん!」とばかりに始めた結果がヘレン・ラヴという打ち込みポップ・パンク・ユニットなのだから、そのサウンド自体にも彼女の精神性が強く表れているのである。
そんなヘレン・ラヴも『The Bubblegum Killers EP』辺りからはPCを使って作曲〜録音を行うようになったのであろう、リズムがグルーヴィーでディスコ寄りになり、アルバムという長丁場になるとどうしても散漫になりがちだった金太郎飴的なサウンドに粘り強さが生まれてきた。これによってジョー・クイアーに匹敵する名ソング・ライターが正当に評価される為の環境がようやく整ったのだった。
というわけで、満を持して発表された本作はもう最高である。キラキラと輝くポップ極まりない楽曲の数々は、とてもキャリア10年超とは思えない瑞々しさ。初期衝動を決して忘れていないのが彼女の「若さ」の秘訣。「私の人生のBGMは、いつだってポール・マッカートニー&ウイングスの'Jet'だった」と歌われる「Jet」(ってまんまじゃんか!)、1910フルーツガム・カンパニーに捧げられた「The 1910 Fruitgum Company」(って少しは捻れよ!)、映画『メイヤー・オブ・サンセット・ストリップ』でお馴染みのロドニー・ビンゲンハイマーに捧げられた「Rodneys English Disco」などなど、相変わらずポップ・ミュージックへの愛が溢れまくった全16曲46分。聴いているとこんなにも勇気が湧いてくるアルバムなんて、そうはあるもんじゃないぜ。文句無しにヘレン・ラヴの最高傑作。必聴。
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