The Queers/The Queers Are Here
★★
これは酷いなあ。何が酷いって画質と音質が。もともとクイアーズというバンドの規模からいって、プロショットのライヴ映像がそうそう残されているわけがないんだが、彼等にとって初となるこのDVDでも、PVを除くとブート・レベルのライヴ映像のオンパレードなのであった。PVですらビデオ起こしがバレバレの劣悪画質だし(マスターフィルムは残ってないのか?)。というわけで、クイアーズの全アルバムを揃えているようなファン以外は買う必要なし。特に『Munki Brain』で初めてクイアーズに触れたような人がいきなり本作を購入すると痛い目に遭うと思うぞ。
と、一見さんに注意を呼びかけたところで、ファンの目線からこのDVDを見てみれば、貴重な映像が満載なことは確かだ。いきなりジョー・クイアーと客が喧嘩するシーンから始まるし。まるでレディオヘッドの「Paranoid Android」のような(って書くとつまらなそうだけど)「I Can't Get Over You」のアニメPVは泣ける。64分。
それにしてもクイアーズがパンク・ファン以外になかなか聴かれないってのはあまりにも勿体無いよなあ。たとえばジョー・クイアーも大好きなマフスがそうであるように、シンプルなサウンドの中に良質なポップ・ミュージックのエッセンスがたっぷりと詰めこまれていることがもっと強調されるべきだろう。こちらのインタビューでジョー・クイアー自身が発言しているように、彼はパンク・ロックばかり聴いているわけではなくて、むしろビーチ・ボーイズやデル・シャノン、ビートルズなどといった、パンク・ロック以前の、パンク・ロックのルーツになった音楽の熱心なファンでもあるのだから(特にデル・シャノンというチョイスは彼の「モータウン以降ブリティッシュ・インヴェイジョン以前」という趣向を窺わせて興味深い。マフスなんかの場合はもっと英国ロック寄りなわけで)。ラモーンズについても、「俺にとってラモーンズとは、要するに良質なビーチ・ボーイズ的サウンドを持ったバンドなんだよ」と言っているでしょ?