★★★★★
アメリカという国の音楽市場は何故かベスト盤が売れにくい構造になっているために、年末の繁忙期になると大物アーティストの新作アルバムが乱発されることになるんだが、日本に住むおいらからしてみると迷惑もいいところだ。だって、そのせいでこんな重要作が未聴の新譜の山の中に3ヶ月近くも埋もれてしまっていたんだから(ってそれはおいら自身の問題ですね、はい)。
とにかく前作『Goodies』をさらに先鋭化させた、異常なほどハイファイなサウンド・プロダクションが凄すぎる。名手フィル・タンによる絶妙なミックスも相俟って、もはや時代は完全に00年代であることを改めて実感させられたよ。これが100万枚単位で売れるアイドルのアルバムで展開されているんだから、アメリカの芸能界の懐の深さたるや恐るべし。
個人的にはシアラの軽みのある歌声が活かされた、リン・コリンズ・ネタの甘酸っぱい「Make It Last Forever」が特に気に入った。アルバムのフューチャリスティックなサウンド・イメージを見事に具現化させたジャケット写真も素晴らしい。そういえば彼女って歌声もルックスもどこかアリーヤを彷彿とさせるものがあるんだよな。というわけでアリーヤの『One In A Million』〜『Aaliyah』の系譜を受け継ぐ傑作、と思う。全18曲59分。昨年中に聴いていれば年間ベスト10入りは間違いなかったのに。