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前作『Volume One』からちょうど2年で発表された待望の2ndアルバム。まあ普通のバンドならば平均的なペースといえるんだろうが、ズーイー・デシャネルは女優として、M・ウォードはソロ・シンガーとして、さらにはモンスターズ・オブ・フォークのメンバーとしても多忙を極めているわけで、2人ともどれだけワーカホリックなんだよって話だ。
前作ではかなり直接的にビートリーなサウンドが全面展開されていたのに比べると、本作では4度マイナー使いが印象的な先行シングル「In The Sun」を筆頭に、ズーイーのソングライティング自体は相変わらずビートリーではあるものの、サウンドの“習作”感は薄まった印象。ズーイーの歌声も、前作ではオリジナル曲に対するアプローチを模索しているような場面も見受けられたのに対して、本作ではエイミー・マンすらをも彷彿とさせる落ち着いた深みのある歌唱を聴かせてくれる。でもまあ、何よりも特筆すべきはズーイーのソングライターとしての著しい成長っぷりでしょう！ 前作をはるかに超えるキャッチーかつウェルメイドな楽曲が満載。ライヴ活動によってバンド・サウンドへの意識が芽生え、ピアノでもギターでも弾きやすい曲を心がけたことがプラスに作用しているのではないかと思われる。オープニング曲の「Thieves」からしていきなりギターで作曲したニール・ヤンガーなフォーク・ロック・ナンバーだし。
ちなみに、もしかしたらズーイーの夫であるデス・キャブ・フォー・キューティーのベン・ギバードの参加を期待している人がいるのかもしれないけど、それはなし、ということでやっぱりズーイー・デシャネルは独立独歩な人であるなあと改めて思わされたことだった（いや、別にベンが参加してたからって独立独歩じゃなくなるわけじゃないけどさ）。その代わり、と言っては何だが、ズーイーの“盟友”であるジェイソン・シュワルツマンが前作に引き続き関わっているのが嬉しい。恋人としての関係が終わった後でも、友人として良好な関係を保っている2人がなんとも素敵。
スキーター・デイヴィスの「Gonna Get Along With You Now」とNRBQの「Ridin' In My Car」のカヴァーを含む全13曲43分。2作目のジンクスを真正面から、堂々と乗り越えてみせた傑作だ。なんつうか、（前作も同様なんだけど）いわゆる“名作”然とした鈍重さが一切なくて、いかにもズーイーらしい人懐っこさ／小品感が全編に漂っているのがまた堪らないね。大好き！ ちなみに日本盤はおいらこと岡俊彦がライナーノーツを書いているのはどうでもいいとしても、ロネッツ／ビーチ・ボーイズのカヴァー「I Can Hear Music」がボーナス・トラックとして収録されていてアルバムのまとまりがアップしているのでそちらをお勧め致します（日本盤を買ってもらった方が来日公演が実現しやすくなるってのもある）。
She & Him - In The Sun
