★★★★
ジョン・レノンのソロ・アルバムのリミックス&リマスター版はどれも疑問符を付けざるを得ない出来のものばかりなんだが、今回に限ってはなかなかいいんでないの?
そもそも、このカバー・アルバムの収録曲はジャケットから予期されるような「パンク」なアレンジは施されておらず、逆に原曲よりもかなりテンポを落としてあるわけで、必ずしもオリジナル・ミックスのような団子状の音塊に拘る必要はないと思うのだ。リミックス&リマスターによって音の分離が良くなったおかげでホーンやピアノが際立つようになったのは個人的には歓迎したいところ。
で、こうやって改めて聴いてみると、フィル・スペクターとの共同プロデュースによる73年録音分は確かにどれもヘロヘロな出来なんだが、ジョンのテンションには鬼気迫るものがあってなかなか捨て難いんですな。ジョンが単独でプロデュースした74年録音分の方が無難な(=当り障りのない)出来で、その微妙なバランスによってどうにか傑作になったという感じ。
あと、全くどうでもいい事なんだが、『Walls And Bridges』に続いてここでも「Ya Ya」をカバーしてるから、おいらにとってこの曲は(リー・ドーシーではなくて)完全にジョンのイメージしかないんだな。刷り込みってのは恐ろしいもんだ。ボーナス・トラックとして収録された「Just Because (Reprise)」はそんなおいらのようなビートルズ・ファンへの嬉しいプレゼント。全17曲54分。