★★★★
昨年の9月7日に肺癌のために死亡したウォーレン・ジヴォンのトリビュート盤。個人的にはトリビュート・アルバムって好きじゃない。自分の持ち場で戦えよ!と思うから。でも、本作はそんな天邪鬼なおいらでも楽しむ事ができた。
考えられる理由としては、ジヴォンの死の直後という事で変に浮かれたものにはなっておらず、強烈なユーモア・センスを持っていたジヴォンの楽曲をカバーするという事で、変にしんみりしたものにもなっていない為だろう。その微妙なバランスがなんとも心地よいのだ。
注目すべきはアダム・サンドラーが「Warewolves Of London」のカバーで参加している事。この曲って「あほー」という雄叫びが特徴なわけで、てっきりそこを強調したコミック・ソングになっていると思ったんだが、茶化し無しの大真面目なカバーなんで驚いた。これはこれでかっちょいいぞ。いやあ、サンドラーって本当にロック好きなんだねえ。
最後期のジヴォンの制作パートナーだったホルヘ・カルデロンによる「Keep Me In Your Heart」(ラスト・アルバム『The Wind』に収録)はまるでジヴォン本人が歌っているかのよう。そりゃそうか。『The Wind』ではすでに衰弱していたジヴォンのボーカルを補強するために、かなりの部分で彼のコーラスが加えられていたからな。
ブルース・スプリングスティーンがジヴォンの死から4日後にライブでカバーした「My Ride's Here(俺のお迎えの車がやってきた)」は、ジヴォンへの溢れんばかりの愛情が感じられて本当に素晴らしい。
ジャケには表記されていないが、マフス*1のキムも「Studebaker」を歌っているので当サイトの訪問者は要チェック。これだけフォーク/カントリー色の濃い楽曲だと、彼女の声はまるでシェリル・クロウのように響いてくる。また、当サイト的にはジル・ソビュールによる「Don't Let Us Get Sick」も注目だ。これは『The Folk Years』*2に収録されていたのと同じバージョンですね。
その他にはジャクソン・ブラウン、ドン・ヘンリー、ボブ・ディラン、ピート・ヨーン、ピクシーズ(!)、ビリーボブ・ソーントン(!!)といった錚々たる面子が参加。役者が二人も参加してるってのは、ジヴォンの楽曲がいかに映像的かって事の証左だよな。大傑作アルバム『Warren Zevon』*3から1曲しか選ばれていないのは少し残念だが、これを機会にジヴォンの世界に入る人も多いだろうから、お楽しみは後に取っておくって事か。ヴァン・ダイク・パークスによるシークレット・トラックも含む全15曲57分。