マック・ミラーの遺作『Circles』を聴いて、やはりキム・シャタックの遺作となったマフスの『No Holiday』は特殊な立ち位置の作品であると改めて思ったことだった。
「遺作」には幾つかのパターンがあって、
(1)ジョン・レノンの『Double Fantasy』やマック・ミラーの『Swimming』のように、すでに生前に完成/リリースしていてその後に本人が不慮の死を遂げたパターン(キャプテン・ビーフハートの『Ice Cream for Crow』のように、作品の発表から数年〜数十年経って本人が死んだ場合もこちらのパターンに含める)
(2)ジョン・レノンの『Milk And Honey』や今回のマック・ミラーの『Circles』のように、死の直前まで本人が取り組んでいた未完の作品を、周囲の人間がアーティストの意向を想像して完成させたパターン。
(3)デヴィッド・ボウイの『Blackstar』やウォーレン・ジヴォンの『The Wind』のように、アーティスト本人が自分の死を自覚して完成させたパターン。
大抵はこの3つのパターンのどれかになると思う。たとえばFebbの『L.O.C -Talkin' About Money-』は(1)で、『SUPREME SEASON 1.5』は(2)になる。
マフスの『No Holiday』は基本的には(3)のタイプの作品なんだが、デヴィッド・ボウイの『Blackstar』やウォーレン・ジヴォンの『The Wind』などを聴けば分かるように、そういった作品は収録曲自体も自身の死を意識して書かれたものになることが多い。しかし、マフスの『No Holiday』は死を意識して書かれた楽曲は1つもない。キム・シャタックはALSという特殊な病気を患っていたこともあって、彼女が途中まで取り組んでいたデモ音源を自身のディレクションによって完成させたという非常に珍しい内容の作品になっているのだった。つまりは(2)と(3)のハイブリッド。
昨年リリースされたハリー・ニルソンの『Losst & Founnd』はモロに(2)のタイプの遺作でしたな。こちらは『Knnillssonn』を彷彿させる、70年代後半の(調子の良い時の)ニルソン風アルバムで素敵な内容でした。