映画『I Care A Lot』(監督:J・ブレイクソン)観賞。★★★★★。
本作でゴールデン・グローブ賞の女優賞(ミュージカル・コメディ部門)にロザムンド・パイクがノミネート! 全世界同時にNetflixで配信されている映画だけど、日本だけ除外って『ダンプリン』と同じパターンじゃねえか(ってことは『ダンプリン』と同様に数ヶ月遅れで日本でも配信されるのか?)。
金持ちの老人を養護施設に無理矢理ブチ込んで彼等の後見人になることによって金を巻き上げているロザムンド・パイク&エイザ・ゴンザレスの詐欺師コンビがダイアン・ウィーストを養護施設にブチ込んだことから起こる悪人達の攻防戦。監督は傑作『アリス・クリードの失踪』のJ・ブレイクソン。金持ちの令嬢を誘拐して監禁する限定状況映画だった『アリス・クリードの失踪』が周囲の人々を巻き込んで騒動が大きくなっていったとしたらどうなるのか、というのが本作である。というわけで『アリス・クリードの失踪』で見たモチーフがそこここに。現在の資本主義社会における搾取のシステムはほとんど詐欺のようなものだ、という皮肉もピリリと効いている。こういう映画が面白いんだってば!
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どうでもいいけどピーナッツくんの(鼻にかかってるというか鼻にかけている)声ってちょっとレイ・デイヴィスっぽいと思う。だから好き。
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みのミュージックでキンクス入門動画きましたね。自分の20年以上使っているメールアドレスはキンクスの「The Hard Way」から採っていて、サム・フリークスのグッズでもキンクスへのオマージュを込めているから、これは魂の根源に関わる部分の話なのであります。そういえば『クイーンズ・ギャンビット』でもキンクスの「Stop Your Sobbing」(後にプリテンダーズもカヴァーした名曲)が使われてたすよね。この曲なんかに顕著だけど、捻くれながらも はみ出し者に対する優しさが滲み出てくるところが堪んないんだよなー。以前から言っている通りで「キンクスというバンド自体がはみ出し者にとっての究極のアイコン」だと思っています。
3月末にはキンクス本が出版されるよー。自分も予約しました!
レコード好き的M-1の敗者復活は予選からずっとThe Kinks Tシャツを衣装にされていたニッポンの社長の辻さんに1票でした。これはもうキンクスがM-1に出場したも同然。何よりこのTシャツ、僕も持っているもので。もちろんネタは超面白かったです。 pic.twitter.com/dJdEZ8kTxc
— タペレコ (@disconlyknows) 2018年12月2日
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ザ・バンドの『Stage Fright』の50周年記念エディションを聴いたら、リミックスによってこれまでモコモコとしていた音像がスッキリと整理されて(しかも曲順まで変更されて)めちゃくちゃ溌剌としたロック・アルバムになっていてちょっと笑ってしまった。めっちゃ若返ってるで。「The Shape I'm In」はシー&ヒムもカヴァーしている名曲ですね。
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『ペニーズ・フロム・ヘブン』で妻を捨てる主人公に感情移入ができないのは当然だ。以前にも書いたように、この作品は「往年のミュージカル映画のダークなパロディ」であり、往年(=1930〜40年前後)のミュージカル映画は当時の映画業界の潮流に従って、物語の骨格はスクリューボール・コメディであることが多いから(たとえばアステア=ロジャーズ映画はミュージカルとしてだけではなく、ほとんどがスクリューボール・コメディとしても傑作である)。スクリューボール・コメディは不倫や重婚といった不道徳な内容を笑い飛ばすパターンが多いので、『ペニーズ・フロム・ヘブン』はこれをパロって逆に不道徳な人々を徹底的にシリアスに描いてみせているのである。「スクリューボール・コメディ(変人喜劇)」から喜劇の要素が取り払われたらどうなるのか、「変人」が深刻な大恐慌の時代にそのまま放り込まれたらどうなるのか、というのが『ペニーズ・フロム・ヘブン』という作品の本質なのだ。
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映画『Music』におけるシーアの自閉症者コミュニティに対する不誠実な態度・対応と、『ユニークライフ』のジェニファー・ジェイソン・リーを含む製作陣の誠実な態度・対応。