映画『アリス・クリードの失踪』(監督:J・ブレイクソン)観賞。★★★★★。
2010年のおいらのベスト1映画だった本作がいよいよ今週末から日本でも劇場公開される。感想は昨年オーストラリアで観てきた時にちょこっと書いているんだが、そこに付け加える形でいくつか。
『CUBE』の悪影響なのだろうか、ここ10年ぐらいの限定状況サスペンスは「いかに奇抜な設定を作れるか」という点ばかりに重きが置かれた出オチ的な作品が多いように見受けられる。その最悪形がたとえば『リミット』だったりしたわけだが、本作はむしろその後の展開にしっかりと重きが置かれた作劇の基本に非常に忠実な映画で、限定状況サスペンスの醍醐味を存分に堪能できる。言ってしまえば3コードだけで作られたウェルメイドなポップ・ソングのような映画、つまりクリスタルズの「Da Doo Ron Ron」のような映画なのだ。実際に登場人物も3人だけだしな。
J・ブレイクソンの脚本家らしからぬタイトな演出も大したもので、中でも「you know KNOW it」や「fuck......that!」のようなシンプルな台詞のグルーヴが素晴らしい。コーエン兄弟の『ブラッド・シンプル』やウォシャウスキー兄弟の『バウンド』が好きな方なら是非。密室における政治力学の話という共通点から、個人的には『十二人の怒れる男』と同質のカタルシスを感じたりもした。必見。
↑ダニー役のマーティン・コムストンが出演しているザ・ビュー「Grace」のPV。