フィル・スペクターによる「The Long And Winding Road」のアレンジのどこにポール・マッカートニーが怒ったのかという考察。かなり厚化粧な『Give My Regards To Broad Street』でのリメイク・ヴァージョンでもCmで締めているので、たぶんこれが正解だと思う。つまり、ゲット・バック・セッションでジョン・レノンが演奏を間違えなければ、後にビートルズがあそこまで揉めることもなかったというわけだ(そして、セッション当時はこんなこと気にしているわけもない)。そりゃあ彼等の中でゲット・バック・セッションの印象が悪くなっていっても仕方ないわな。
ちなみに『Let It Be... Naked』にはジョン・レノンが間違えなかった方のヴァージョンが収録されています。
Bassを弾いていたジョン・レノンがエンディング近くのコードを間違えてしまう(最後の Door~の部分。進行を勘違いし本来 C である部分を E♭で弾く)
70年になってスペクターが「リ・プロデュース」した際も、テイクの選択に関しては、屋上パフォーマンスを除いてジョンズのものが殆ど引き継がれた。(中略)彼は歌のエンディングをジョン・レノンが間違えたコードのままアレンジした。つまり、本来 Cmである筈の部分を、平行コードである E♭メジャーでアレンジしてしまったわけだ。
ポール・マッカートニーは、その後も長年に渡り同曲をライブ等で再演し続けているが、その何れのバージョンも Cmで締めていることから、本来はやはり Cmが正しいと思われる。というか、ここが違うとまったく別な曲なのだ(何故なら、このメロディで Cmになるのはここだけだから。本来 E♭で良い筈の部分を敢えて平行コードである Cmにして切なさを出しているわけ。その唯一のコダワリ部分を無くすということは…つまり、この曲じゃなくなるということだ)。ポールの怒りはもっともである。