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今年の春に発売が予定されていた2ndアルバム『Joyride』はレコード会社側からのペンディングによって延期を繰り返し、予定されていた来日公演は中止、さらにはその間に『Joyride』のタイトル・トラックがリアーナに奪われるという不遇の1年を過ごしてきたティナーシェさん。名目的にはミックステープ(と公式サイトに書いてある)ということではあるにせよ、こうやって無事に新作がリリースされて感激もひとしおであります。昨年末から「Player」「Superlove」のような明らかにレコード会社におもねったポップなナンバーと、「Party Favors」「Ride Of Your Life」のようなトラップ/アンビエントR&B寄りのナンバーが交互にリリースされてきたわけだが、本作は(ミックステープということも影響しているのか)後者路線に的を絞ったタイトなアルバムとして仕上げられている。結果的には本人も自分のやりたいことが突き詰められて良かったんではないでしょうか。まあ、前者路線をそれなりに上手にこなせてしまう器用貧乏なところがレコード会社にいいように扱われてしまう原因にもなっているとは思うんだが。最近の大量のフィーチャリング仕事や「Superlove」での体を張ったPVも、本作をリリースする為のレコード会社に対する妥協案に思えて何だか泣けてくるぜ。いずれにしてもシンガー・ソングライターとして図抜けた才能を持つ人であることは間違いないので、この傑作が一人でも多くの人に届くことを望む。