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前作にあたる『MASHED PIECES』および『MASHED PIECES#2』では歌はどちらかといえば添え物的扱いで、あくまでもトラックに焦点を当てた内容、前々作『The Nightbird』はカヴァー集だったので、彼女のシンガー・ソングライターとしての妙技が味わえるアルバムとしては『大都市を電車はゆく』以来、なんと8年ぶり。
マイケル・ジャクソンの「Wanna Be Startin' Somethin'」風のベース・ラインが印象的な「ミッドナイトサン」で幕を開ける本作、「Virtual Intimacy」は「P.Y.T. (Pretty Young Thing)」風、アルバム後半のクライマックスとなっている「愛のまぼろし」も「Human Nature」風で、全体的にG.RINAのマイケル・ジャクソン愛が強く感じられる、『Thriller』を下敷きにしたかのような内容。となると、DJ SENORINA名義で発表されたインドをテーマとしたミックスCD『Ishq Ishq India』で、突如としてマイケルの「The Way You Make Me Feel」が大フィーチャーされていたことも思い出されたりもするわけで、彼女の15年近いキャリアを総括してさらなる高みへと登り詰めた極上の作品に仕上がっていると思う。PUNPEEやtofubeatsといったG.RINAに影響を受けた世代のミュージシャンとの共演も新鮮。酸いも甘いも噛み分けた歌詞も味わい深すぎて素晴らしいなー。特に「黄昏のメモリーレーン」での「いろんな約束が果たされなかったけど/うつむいたまま生きることなどないんだよ」というフレーズは胸に突き刺さりまくった。こんなアルバムを作る人(達)がいるってだけで、世界は素晴らしいと思えてくるぜ。全11曲45分。傑作。