★★★★
先月末の来日公演も素晴らしかったヤム・ヤムズの別ユニットのデビュー・アルバム。普段のバンド活動では小出しにしているオールディーズ趣味を前面に押し出した作りで、要するにXTCにおけるデュークス・オブ・ストラスフィアとか、ボーイズにおけるヨブスみたいなもんだ。最も近いといえるのはグリーン・デイにおけるフォックスボロ・ホットタブスだろうか。
収録曲はオリジナルとカヴァーが半分づつ。リード・ヴォーカルの配分はヴィべケが10曲、モーテンが4曲となっていて、ヤムヤムズの時に比べるとヴィベケを大きくフィーチャー(だからジャケットにも大きく写っているというわけだ)。彼女は歌い上げ系の古いタイプのヴォーカリストなので使い方がなかなか難しいと思うんだが、こういう50年代〜60年代風なロックンロール色の濃い楽曲群ではそれがうまくハマっている。個人的には(ズーイー・デシャネルもお気に入りの)ワンダ・ジャクソンを想起したりもした。ちなみにヴィベケのソロ・アルバム『World Famous Hat Trick』は本作とは趣向の異なるブロンディ風味な傑作なのでこちらも要チェックですぞ。
本作を聴いてはっきりと分かるのは、ツイスタルーズもといヤム・ヤムズのダンパ・バンドとしての基礎体力の高さだ。先日の来日公演の底抜けな楽しさはこうしたところに裏打ちされていたわけですな。カヴァーの選曲も、エタ・ジェイムズの「Tough Lover」やトム・ジョーンズの「Chills And Fever」(オリジナルはロニー・ラヴ)などの有名どころを押さえつつ、デイヴィ・ジョーンズ(モンキーズのメンバーとは別人)の「The Chase」を引っ張り出してくる辺りがアメリカやイギリスのバンドにはない気の利いたセンスで楽しい(というか物凄く日本人っぽい)。全14曲33分。