★★★★★
Bobbie Gentry/Patchwork / Fancy
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相変わらずジャケットの詐欺っぷりが芸術的なまでに美しいアデルの2ndアルバム。同時期のデビュー組でアデルの比較対象でもあったダフィーが2ndアルバムで伸び悩んでいるのに対して、本作が熱狂的に支持されているのは、やはり2人の音楽家としてのポテンシャルの差が露呈したということなんだと思う。っていうかアデルって1988年5月生まれなんだけど、2008年初頭に発売された前作のタイトルが『19』で、その3年後に発売された本作のタイトルが『21』って、年齢の数え方が間違ってねえか? おそらく本人的には「21歳の時に書いた曲が収録されているから」みたいなエクスキューズがあるんだろうが、そーゆーのを「サバを読む」というのだ。大胆なアレンジによるキュアー「Love Song」のカヴァーを含む全11曲48分。
さて、アデルの土臭くてハスキーな歌声を聴いていると、おいらは(ズーイー・デシャネルも大好きな)ボビー・ジェントリーを想起せずにはいられない。ボビー・ジェントリーは1967年のデビュー作『Ode To Billie Joe』こそ大ヒットしたものの、以降はヒットに恵まれず、60年代はまだ「女性シンガー・ソングライター」という概念自体がそれほど定着していなかったということもあって、アルバムを追うごとに自作曲発表の場が減少。1971年には起死回生を賭けて全曲を自作曲でまとめた意欲作かつ最高傑作である『Patchwork』を発表するも、商業的に大惨敗を喫したたためにレコーディング・アーティストとしての生命が断たれてしまう。2009年にジル・ソビュールが「ボビー・ジェントリーはどこに?」という曲を発表したように現在は音楽業界から完全に身を引いてしまっているわけだが、アデルならば彼女の無念を晴らしてくれるのではないか、なんて勝手に想いを巡らせてしまうのだった。