MC Lars & YTCracker/The Digital Gangster LP
★★★★
MC・ラーズとYTクラッカーが昨年11月に連名で発表した共作アルバム。iTunes Storeや彼等の公式サイトでは普通に買えるものの、どちらかといえばストリート・アルバム的な扱いと考えるべきだろう。
いきなりYTクラッカーと言われても誰のことやらって感じかもしれないけど、彼は元ハッカー(クラッカー)という異色の経歴を持つラッパーで、10年ぐらい前に「高校生がNASAサイトなどをクラッキング」って事件があったことを覚えている人は多いんじゃないかな? これの犯人がYTクラッカーなんだよ! まさにデジタル時代のリアル・ギャングスタ・ラッパー。
YTクラッカーがナードコア・ヒップホップ・シーンの人だということもあって、アルバム全体の傾向としては比較的正統派なナードコア・ヒップホップ・サウンドが中心(ってのも変な言い方だな)。MC・ラーズもナードコアの流れを汲んでいることは確かなんだが、あくまでもラッパーとして参加している本作の後に、彼自身がトラック作りに全面的に関わっている『The Graduate』や『This Gigantic Robot Kills』を聴くと、彼のナードコア・ヒップホップ・シーンからの逸脱っぷりが浮き彫りになるという仕組みだ。ちなみに『This Gigantic Robot Kills』収録の「We Have Arrived」は本作が初出。全14曲44分。