Various Artists/Sweetheart: Our Favorite Artists Sing Their Favorite Love Songs
★★★
バレンタイン商戦に合わせて北米のスターバックス限定で発売されたコンピレーション・アルバム(なんだけど、iTunes Storeなどを使えば日本からでも買える)。タイトルからも分かるようにインディー・ロック系のアーティストがお気に入りのラヴ・ソングをカヴァーしているわけ。このシリーズって2005年版ではM・ウォードがピート・タウンゼントの「Let My Love Open The Door」(名曲!)をカヴァーしていたりと、意外に侮れないんだわ。今回もデス・キャブ・フォー・キューティーやA.C.ニューマンやデヴォーチカ等、痒いところに手が届く人選。
ブルース・スプリングスティーン「I'm On Fire」やa-ha「Take On Me」がカヴァーされていたりするのは参加アーティストの世代感が強く出ていて興味深いんだが、そこらへんの楽曲は最近のインディー勢のスケールの小ささが悪い形で出たしみったれたアレンジが多いので、実際に聴いた時の面白みはそれほどでもない。逆にオールドタイミーな楽曲に真正面から取り組んでいる人達の方が遥かに「聴ける」ものに仕上がっていると思う。中でもリチャード・ハーレイによる「Early Morning Rain」の軽やかなカヴァー(オリジナルはゴードン・ライトフット)が気に入った。彼って元ロングピッグスなんて肩書きが必要ないほどにソロ・アーティストとして成功したわけで、これを機会に彼のアルバムも聴いてみようと思いましたわ。
ちなみに、おいらはシー&ヒム目当てで本作を購入したんだが、彼等はスクリーミン・ジェイ・ホーキンスの「I Put A Spell On You」をカヴァー。節回しなんかはニーナ・シモンのヴァージョンを下敷きにしてますな。まあズーイーは『I Put A Spell On You』をお気に入りに挙げているぐらいだし。それにしてもズーイーが本作に寄せているコメントが最高すぎる。「どうせみんなハッピーなラヴ・ソングを演るだろうから、私達は孤独な人達に向けた歌を演ることにした」だって。もうキンクス・ファンの鏡というべき天の邪鬼っぷりである。いやあ、本当にこの人はどこまでも信用できるなあ。全14曲51分。