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ユー・アム・アイの8thアルバム。バンドとしては2年振りの作品なんだが、昨年はティム・ロジャースのソロ・アルバム『The Luxury Of Hysteria』が出ているわけで、相変わらずワーカホリックな人達だこと。
前作『Convicts』は00年代最高のロックンロール・アルバムともいうべき大傑作だっただけに、彼等もさすがにあの路線を無理に継続するのは避けたようで、それは『Convicts』とは正反対の定位でミックスされている、つまり右チャンネルにロジャースのギターが置かれ、左チャンネルにデイヴィ・レインのギターが置かれていることからも明らかだ。
逆にいえば、それは気の赴くままにサウンドを組み立てられる自由が与えられたということでもある。アコースティック・ギターの弾き語りを基調としたオープニング・ナンバー「Dilettantes」からてっきり『Hourly Daily』路線かと思いきや、サウンドはこれまでになくサイケデリック色が濃いし、でもきちんとロッキンでゲイリー・グリッター風味のズンドコ・ロック・ナンバーもあったりするわで、その懐の深さたるや恐るべし。
そしてそして、前作から本作までの間にクラウデッド・ハウス及びスパジーズのギタリストを務めるなど、すっかりオーストラリアのロック・シーンを代表するギタリストになった感もあるデイヴィ・レインのギターも冴えまくり。まあ、それもこれもティムやんのしっかりとしたソングライティングが楽曲の核にあればこそ。この人は全盛期にピート・タウンゼントに匹敵する実力と才能を持ち合わせていると思うんだが、どうにも本国オーストラリア以外での評価が上がらないのが納得いかないぜ。
全12曲50分。初聴きのインパクトこそ『Convict』に劣るものの、相変わらず風通しの良いギター・ロック・アルバムだ。雰囲気的に最も近いのは彼等の評価を決定づけた2ndアルバム『Hi-Fi Way』なんだけど、あの頃にはなかった堂々とした力強さが加わっているのが本作の良さといえよう。
ちなみにオーストラリアのiTunes Storeで本作を購入すると、ボーナス・トラックとして98年に行われた幻の日本公演(@武道館)のライヴ・ビデオを入手できるぞ!
You Am I - Erasmus
↑やっぱりオーストラリア最強のロックンロール・バンドはユー・アム・アイで決まりだわ。