You Am I/The Lives Of Others
★★★★★
ピート・タウンゼントの息子も彼等の大ファンであることが判明したユー・アム・アイの11thアルバム。
ニューヨークの小さなスタジオで合宿しながら録音された前作『Porridge And Hotsauce』はローリング・ストーンズ『Sticky Fingers』のスペイン盤をパロったジャケットからも明らかなようにロッキンな内容だったが、本作はコロナ禍においてリモートで録音されたことも影響したのか、かなりシンガー・ソングライター色の濃い内容。ここまでシンガー・ソングライター色が濃いのは3rdアルバムの『Hourly, Daily』以来か。とはいえ、前作からギタリストのデイヴィ・レインもバンドに楽曲提供をするようになっているので、バンドとしての有機的な化学反応も起きており、ほとんどティム・ロジャースのワンマン・バンド状態であった『Hourly, Daily』とはまた違った味わいがある。
「これは彼の最高傑作じゃないかもしれない/でも曲を聴きながら涙がこぼれていた」という歌詞でウォーターボーイズとマイク・スコット(「The Whole of the Moon」!「I Can See Elvis」!)への愛を歌った冒頭曲「The Waterboy」からして、いまだに彼等が大のロックンロール・ファンであることが伝わってきて、その瑞々しさに感動させられることしきり。この曲の歌詞は、音楽が大好きでそれを追い続けている人間の偽らざる心情であり、自分が本作に対して抱く感情も同じようなものだ。そして「DRB Hudson」ではザ・フーのようなギターのカッティングもここぞとばかりに飛び出してきて嬉しくなる。一生ついて行きます! 全12曲46分。