『ヒューマン・トラフィック』(監督:クリスチャン・デュゲイ)観賞。★★★。
『スキャナーズ2』『スキャナーズ3』『スクリーマーズ』『アサインメント』という最高のフィルモグラフィーを持つB級映画の巨匠の最新監督作(TVムービー)は、なんとクリスチャン・デュゲイ版『リリア 4-ever』だった。いや、題材が同じヒューマン・トラフィッキングってだけなんだけどさ(本作の原題は『Human Trafficking』と直球)。
力作ではある。だが、社会派サスペンスであるが故の限界を感じたのも事実。だって断言してもいいけれど、この作品、(ヒューマン・トラフィッキングの被害者となる)10代の少年少女は絶対に観ないよね。『リリア 4-ever』が凄いのは、あれが10代の少年少女に向けた青春映画(「私ね、ブリトニー・スピアーズと誕生日が一緒なんだ」といった瑞々しい台詞の数々!)として作られているからだ。
あとはまあ、アメリカ人とドイツ人とポーランド人とウクライナ人が何の不自由もなく英語で会話してしまう不自然さとか。ロシア人の少女が言葉の全く通じないスウェーデンに連れてこられて売春をさせられる、といった『リリア 4-ever』で描かれていたような恐怖はここにはない。ヒューマン・トラフィッキングの本当の恐ろしさとは、ローカルな犯罪が世界的な規模で行われているところにあるのに。20世紀ならともかくとして、今の時代はこうした「言葉の壁」にもっと意識的になるべきだと思うんだよね。言葉の限界を知るとは世界を知ることであり、それはすなわち「自分自身」を知るということなのだから(『ルワンダの涙』が『ホテル・ルワンダ』より優れているのも同じ理由による)。
で、『闇の子供たち』は「じゃあ、誰が観るの?」ということを踏まえた作りになってはいるんだが、それも結局のところは「俺は分かってるぜ」という目配せにしかなってないと思うんだよね。そういう意味でも、徹底的にストイックな『リリア 4-ever』をおいらは支持したいな。