映画『ペネロピ』(監督:マーク・パランスキー)観賞。★★★★。
「コンプレックスについての話」、というには少し違う気がする。たしかにクリスティーナ・リッチ演じる「あなた顔がそっくりですね、豚に」(by 電気グルーヴ)という女の子がそれに向き合っていく話ではあるんだけど、基本的なストーリー・ラインは「箱入り娘が自分自身の足で立つこと覚える」までを描いた『カーラの結婚宣言』なんかに近い類の作品なのである。その過程で自分が自分であることを受け入れるのが必要不可欠なだけであって。おいらはrevolution 11さんが『KISSingジェシカ』のレヴューで書かれていたことを思い出したりもした。
これを書きながら、何となく"Be proud of who you are and don't be scared!"(by Joe Queer)という言葉を思い出した。この歌詞の出典も同性愛の歌だし。ただ、これってそう簡単な話ではない。こいつを実践していく過程でどうしても生きづらさや、やりづらさが生れてくるだろうし、これって要するに「自分はたった一つだ」ってことを認めようとすることなんだと思う。SMAPの歌のせいでこれがえらいポジティブに聞こえるかもしれないけど、これはつまり「他人とは決してわかりあうことが出来ない」ということまで含意するわけで。結局人間はそこからは逃げられない気がする。そして、逃げちゃいけないんだと思う。生き続けようとする限りは。
キャストは総じて好演だが、中でも小人の新聞記者を演じたピーター・ディンクレイジが素晴らしい。職務を全うする(=ぺネロピの写真を撮る)為にはどんな汚い手でも使おうとするけど、決してぺネロピを世間の笑い物にしようとしているわけではなくて、しかも情には厚い、という『ミナミの帝王』の竹内力にも通じる男気満点なキャラクター造形が絶品。ハリウッド史上最高の小人俳優である彼の演技を見るためだけにでも1800円を払う価値はある。これに乗じて彼の主演映画『Station Agent』(傑作!)もどうにか日本公開してほしいなあ。