★★★
ザ・フーの24年振りとなる奇跡の新作アルバム。先行シングルとなった「Wire & Glass」の感想で「『Face Dances』を彷彿とさせる」と書いた通りに、今作は良い意味でも悪い意味でも「『It's Hard』の次のアルバム」と呼ぶに相応しい内容に仕上がっている。
というわけで、サウンドは80年代のフーのアルバム(と、それと並行して発表されたピート・タウンゼントのソロ・アルバム)の延長線上。「It's Not Enough」なんて最初聴いた時は「Give Blood」かと思ったぜ。ロジャー・ダルトリーの声の衰えも心配されたほどではなくて、かなり頑張っている感じ。現在のフーのドラマーであるザック・スターキーが本作録音時にオアシスのワールド・ツアーに参加していたせいで1曲しか叩いておらず、ドラム・サウンドはやや貧弱な印象。まあ、それも含めて『Face Dances』〜『It's Hard』の延長線上と言えなくはないんだが。
でもさあ、ザック・スターキーが参加できなかったのならば、代わりにマフスのロイ・マクドナルドに叩かせれば良かったじゃんか!と思ってしまうのはおいらだけ? だって、世界中の現役ドラマーの中で最もキース・ムーンに近い領域に到達しているのは、ザック・スターキーではなくてロイ・マクドナルドその人なんだからさ。おいらの言っていることが分からない人は、マフスの『Really Really Happy』を聴いてみるのがいいと思う。全19曲52分。