映画『小さな恋のものがたり』
(監督:マーク・レヴィン 脚本:ジェニファー・フラケット)
★★★★★
『ウィンブルドン』などを手掛けたことで有名な夫婦脚本家チームの初監督作品。原題は『Little Manhattan』。いちおうクレジット上は夫のマーク・レヴィンが監督で、妻のジェニファー・フラケットが脚本ということになっているが、DVDの映像特典などを見る限りではどちらも実質的に二人の共作と考えて構わないようだ。
今のナンシー・マイヤーズが駄目になったとは全く思わないけれど、彼女が最高に輝いていたのは、(元)夫のチャールズ・シャイアとタッグを組んでいた時期、つまりは『ペーパー・ファミリー』から『ファミリー・ゲーム』までだったと思う(『プライベート・ベンジャミン』と『アメリカ万才』はゴールディ・ホーン主導の映画なので除く)。そんなナンシー・マイヤーズ&チャールズ・シャイアが作り上げたファミリー映画のマジックを見事に継承しているのがこの映画。これはまさに子供版『アニー・ホール』+『ペーパー・ファミリー』とでもいうべき傑作なのである。
ジョシュ・ハッチャーソン(『ザスーラ』のお兄ちゃんだ!)は、「主人公がモノローグを喋りまくるロマンティック・コメディ」という、大人でも難しい映画の主役を見事にこなしている。ヒロインを務めるチャーリー・レイはミシェル・トラクテンバーグ似のおへちゃ顔がとってもチャーミング。モノローグの多さと対比させるかのように、二人をキックボードに乗せてマンハッタンの街中を走らせまくったり、空手をさせたりとフィジカルな魅力を存分に引き出している演出も○。
ロストン・ハリスが本人役で出演して歌を披露していたり、フリーディ・ジョンストン(!)によるエジソン・ライトハウスの名カバー「恋のほのお(Love Grows)」(傑作『Right Between The Promises』に収録)が映画のテーマ曲的に使用されていたりするなど、音楽の添え方も最高だ。だーかーらー、こういう映画はDVDスルーにせずにきちんと公開するべきなんだってばよ! 切なくてほろ苦い恋の行方は、大人になればなるほど胸に染みてくるぜ。必見。