★★★★
アウトキャストの新作は彼等自身が主演した映画『Idlewild』のサウンドトラック。
高い評価を受けた前作『Speakerboxxx/The Love Below』がビートルズにおける『ホワイト・アルバム』だったとするならば、今回はさしずめアウトキャスト版『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』といったところだろうか。
もともと『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』は、1871年にアメリカはケンタッキー州で初演されたヴォードヴィル・ショウ『Sargent's Great Vaudeville Company』を元ネタにした、ビートルズ(≒ポール・マッカートニー)流ポピュラー・ミュージック論、もしくはロックを用いた20世紀の大衆音楽の総括ともいえる作品なのだが、それと同じように本作はアウトキャストがヒップホップを用いて、黒人の立場から20世紀の大衆音楽を語り直してみせているのである。映画『Idlewild』の舞台が1930年代のアメリカ南部のジャズ・クラブなのは、19世紀のミンストレル・ショウと戦後のポップ・ミュージックの橋渡しを果たした20世紀の大衆音楽の原点を描く為であり、決して単なる思いつきなんかではないはずなのだ。
まあ、全体的な曲の出来が決して過去最高とはいえないところも『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』と相似なんだけどな(ってことは、やはりアウトキャストにとっての『Revolver』は『Stankonia』だったのだろう)。全25曲78分。映画自体の出来はプリンスの『アンダー・ザ・チェリー・ムーン』級な気がする。