
サム・フリークス Vol.28で上映した『ザ・ビンゴ・ロング・トラヴェリング・オールスターズ&モーター・キングス』について何か書く/言うのであれば、「野球映画」と大雑把に括るのではなく、できれば「黒人野球映画」もしくは「ニグロリーグを題材とした映画」などときちんと言及してもらいたいと個人的には思っています。2024年5月にニグロリーグの記録がMLBの公式記録としてついに認定されましたが、それまでずっとニグロリーグの記録は非公式なものとして扱われてきました。つまり、本当は存在していたのに、ないことにされてきた、軽視されてきたという歴史があり、それこそが人種差別の構造そのものだからです。
あと、これはまあ深読みですが、ニグロリーグの終焉を描いた『ザ・ビンゴ・ロング・トラヴェリング・オールスターズ&モーター・キングス』は、アメリカン・ニューシネマの終焉とも二重写しになる。同作の脚本を手掛けたハル・バーウッドとマシュー・ロビンスのコンビの前作『続・激突!/カージャック』はモロにアメリカン・ニューシネマな内容だったわけですが、その監督を務めたスティーヴン・スピルバーグは『ジョーズ』で大ヒットを飛ばし、アメリカン・ニューシネマという日陰者達の世界から抜け出します。ニグロリーグという野球界における日陰者達の世界からMLBへとスカウトされる若者が登場するところで終わる『ザ・ビンゴ・ロング・トラヴェリング・オールスターズ&モーター・キングス』は、そんな当時の映画界の様相とも重なって見えてくるのでした(ちなみに『ザ・ビンゴ・ロング・トラヴェリング・オールスターズ&モーター・キングス』も当初はスピルバーグが監督する予定でしたが、『ジョーズ』が大ヒットしたことによって降板しています)。
