今年『In The Fade』という素晴らしいパワー・ポップ・アルバムをリリースしたトニー・モリーナの、かつての所属バンドであるオーヴンズが2009年に発表した唯一のアルバム『Ovens』が遂にリイシューされた。この人は活動量が多すぎて未だにその全貌を把握できないでいるんだけど、ハードコア・パンクを出自とする彼が現在のソロ活動に通じるメロディアスな方向性をはっきりと打ち出したのがオーヴンズ、という認識で大体合っているはず。本作に収録されている「Song For Friends」は、それこそ『In The Fade』でリメイクされているしね。ただし、この『Ovens』の時点ではまだ若干パンクの名残もあり、その分だけ彼のルーツが見えるというかリプレイスメンツ的というか、なぜ彼がファストバックスやマフスをお気に入りに挙げるのかがよく分かる内容になっていると思う。ショートチューン目白押しで全44曲1時間という超ガイデッド・バイ・ヴォイシズっぷりも最高。
ライヴの最後にガイデッド・バイ・ヴォイシズの「Dayton, Ohio/19 Something & 5」とリプレイスメンツの「Left Of The Dial」をカヴァーしている。ルーツ開陳! 「R.E.M.の『The Flowers Of Guatemala』をやるよ」と言ってGBVの「Dayton, Ohio/19 Something & 5」を演奏するのは洒落が利いている。深く意識しての発言ではないかもしれないけど、確かにこの2つの曲って微妙にリフやコード進行が似ているといえば似ているんだよな。R.E.M.はGBVのルーツでもあるわけだし。