『デリー・ガールズ』は北アイルランドという土地柄や時代性を踏まえた様々な含みに満ちていて情報量が物凄いことになっており、当然のようにポップ・ソングの使い方もいちいち必然性に満ちていて面白すぎる。たとえば最終話のダンス・シーンではテイク・ザットの「Pray」がフィーチャーされているが、テイク・ザットは下積み時代にゲイ・クラブを廻っていたこともあって、ゲイ・コミュニティからの人気が非常に高かったという事実。そして「Pray」のPVは彼等の楽曲の中でも最もゲイ・テイストの濃い作品であり、『デリー・ガールズ』の最終話の内容をきちんと踏まえた使い方になっているんすよね。しかも、ちゃんと当時のヒット曲でもあるので、主人公達がこの曲を流すのは全く不自然ではないという(『ナポレオン・ダイナマイト』の唐突なジャミロクワイ使いとはそこが大きく違う)。
この曲の「僕が毎晩ができるのは祈ることだけ/いつの日か また君と一緒になれますようにと」というサビの歌詞は友情の復活を望む主人公達の心情と重なるし、さらに言ってしまうと英国からの独立/アイルランドとの統合を望むカトリックの人々の心情とも重なって見えてくる(主人公達はカトリック系の女子高校の生徒で、第5話では彼女達の両親がアイルランドを「自由の国」と呼び、プロテスタントで親英国派のオレンジ結社に対する嫌悪感を示す)。そんな中で、あんなことが起こるわけだ。というわけで『デリー・ガールズ』は音楽好きはマジで必見っすよ。