『アナと雪の女王』はエレン・ペイジがカミングアウトした直後の公開となってタイミング的にはとても良かったんじゃないかな。この映画がLGBTについての真摯な物語であることは、クライマックスの捻った展開(御伽話では「お姫様」が「王子様」の愛で救われるのが定番だけど、「お姫様」が「お姫様」の愛で救われてもいいはずだよね。もちろん、この場面での「愛」はシスターフッドの愛であるわけだが)や、氷の魔法がなくなってめでたしめでたし、とはならないところからも明らか*1。そして、決定的なのは「お前も雪の女王と同じモンスターなのか!?」と聞かれたアナが、「いいえ、私は普通(normal)の人間です」とは答えずに「いいえ、私は平凡な(ordinary)人間です」と(他意がないとしたら)やや不自然な言い回しで答えるところ。それはつまり、雪の女王を「モンスター」だと考えるのは偏見で、彼女は「異常」な存在なのではなくて、「マイノリティ」な存在なのであるということを示している。あなたが自分の本当の姿を隠し続けて生きているということは、あなたのことを大切に思っている人にとっても辛いことなのですよ。あなたを「矯正」しようとする奴等がいたとしても、あなたの「心」は誰にも変えられないのだから。
あと、本作のアナ役の声優にクリステン・ベルが起用されたことで、(『バーレスク』では役柄上の理由から「口パク女優」として扱われていた)彼女がきちんと歌える女優であったということが広く知られるようになってとても嬉しいっす。彼女はブロードウェイ出身で踊りも上手いんすよ。彼女が主演を務めたミュージカル映画『Reefer Madness: The Movie Musical』は、そのポテンシャルが存分に堪能できるのでバチグンのお勧め。これ、私見では00年代のアメリカ製実写ミュージカル映画の最高傑作だと思っています。