Miley Cyrus/Miley Cyrus Bangerz Tour
★★★★★
「はみ出し者が生きていくのは本当に大変だから、私は彼等の背中を押してあげられる人間になりたいの」
サウス・ヒップホップのマナーでアイドル・ポップを奏でた傑作『Bangerz』のツアーを追ったライヴ&ドキュメンタリー作品。ステージ上のカオスな様相やダンサー達の個性豊かな顔ぶれを見れば明らかだが、共演者やスタッフが口を揃えて言うのは「マイリーは自由な心(free spirit)を持っている」ということ。それはカントリー・シーンの中では珍しくリベラルな政治観を持つビリー・レイ・サイラスの娘であるという彼女の出自も大きく影響しているのだろう。本作でのカヴァー曲を見てみても、アウトキャストの「Hey Ya!」、フレーミング・リップスの「In The Morning Of The Magicians」、ビートルズの「Lucy In The Sky With Diamonds」、ドリー・パートンの「Jolene」「Sugar Hill」と、様々な時代とジャンルを気ままに行き来する、マイリーの自由な心を象徴するかのような選曲。そしてディズニーの子飼いタレントとして押さえ付けられ、その世界に馴染みきれなかった経験から育まれていったと思われる、「Can't Be Tamed」な反骨精神と、はみ出し者に対する強い愛。全編から溢れ出る規格外のパワーと一貫した強い意志。だいたい「私は誰からの助けも借りずに一人でやり遂げてみせる/だってこの世には一人で生まれてきたんだから/だから一人ぼっちになることを恐れないで/あなたもきっと一人きりでやり遂げられるはず!」(「On My Own」)なんて歌うアイドルがこれまでいたであろうか。そりゃあルーカス・ムーディソンがマイリーを全面支持するのも当然ですわ。おいらも彼女と同じ時代に生きられることを心から幸せに思います。