Juliana Hatfield/There's Always Another Girl
★★★★
ジュリアナ・ハットフィールドという人はかっちりとしたポップ・アルバムの後には必ずと言っていいほどrawなアルバムを作ってくる傾向がある。個人的に好きなのはやはり前者に属する作品で、中でも2008年の『How To Walk Away』こそがこの人の最高傑作と思っている。『How To Walk Away』に続いて発表された前作『Peace And Love』はジュリアナ・ハットフィールド版『Nebraska』とでも言うべき内容で、やはりrawな作りになっていた。
というわけでいつものパターンからいくと、本作はかっちりとしたポップ・アルバムになるはずなんだが、なんとまたもやrawな作り。これは彼女に商業的な野心がなくなっていっていること、そしてそんな作品に見合ったバジェットを組めるだけの環境が今の音楽業界にはないということなのだろう(音楽業界/時代の変化に合わせるかのように、本作はファンからの出資を元手に制作されている)。というわけで、rawな作りながらも彼女のシンガー・ソングライターとしての側面に焦点が当たったロック・アルバムということで、過去作でいえば『Bed』に近い内容。
『Total System Failure』や『Made In China』といったギタリストとしての鬱憤を晴らしまくったrawな作品を聴くたびに、「『Beautiful Creature』や『In Exile Deo』ではそんなにフラストレーションを溜めこんでいたのか…」と複雑な気分になってきたおいらからしてみると、なんだかんだ言って実はこの路線こそがファンにとっても本人にとっても最も無理のない作りである気がする。どんな曲でも切なさ5割増しになる半泣き声も相変わらず健在だし、このまま現代のニール・ヤングとして順調に作品を重ねていってもらいたいところ。全14曲50分。ちなみにアルバム・タイトル曲はもともとリンジー・ローハンに捧げられたものである。
↑ジュリアナ・ハットフィールドの切ない系の曲では、これとか「Some Rainy Sunday」とか「Remember November」、「Such A Beautiful Girl」辺りが特に好きだな。「Somebody Is Waiting For Me」はメロトロンの音色が素敵やね。